学校の理科の授業では様々な用語が出てきます。

その中でも特に混同しやすいのが、今回紹介する熱容量比熱の2つです。

両方とも熱力学の分野で学習する用語で、物体の温度を上げる関係の問題では「熱容量を求めよ。」とか「熱量を比熱cを用いて表せ。」といった感じで問われることが多いです。

ただ学校の授業で習っても似たような意味を持った用語なので、家に帰って復習する時に混同しやすいですね。

今回は改めて両者の違いについて、公式と図を用いてわかりやすく解説していきます。また比熱が関係している自然現象についても補足で紹介しますのでぜひご覧ください!




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熱とは何か?

熱容量と熱量について解説する前に、まずはについて簡単に紹介しておきましょう。


冷蔵庫で冷やしておいたジュースを取り出して台所のテーブルの上に長時間放置すると、いつの間にかジュースの温度が上がっていて室温とほぼ等しくなります。

これの逆で熱々にしたコーヒーをテーブルの上に放置しておくと、コーヒーが冷えてやはり室温とほぼ等しくなります。


このような状態を熱平衡と呼びますが、これは物体の持つ熱エネルギーが温度差がある時に移動する現象のことで、必ず高温の物体から低温の物体へと移動することになっています。

わかりやすく言えば、熱とは物体との間に温度差がある時に、これらの間を移動するエネルギーのことです。このような定義は1871年にスコットランドの物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェルによってなされました。

これを数値化したのが熱量ということになりますが、その単位については2種類あってやはり混同しがちですね。どう違うのか、下の枠で解説しておきます。

【熱エネルギーの単位は?】

熱エネルギーの単位として教わるのが、J(ジュール)cal(カロリー)の2つです。

カロリーと言えば栄養学のエネルギーの単位として一般に浸透していますが、かつては水1の温度を1℃上げるのに要する熱量とし定義されていました。

熱がエネルギー移動であるという認識がされる前の時代の定義でしたが、1948年の科学者コミュニティで正式にジュールを用いることが決定されました。

カロリーとジュールの関係は、

1cal=4.1860J

という式で表されます、ぜひ覚えておきましょう!

熱いコーヒーや冷たいジュースを飲む時は早い内に飲み干さないとすぐにぬるくなるので美味しくなくなります。

しかし世の中にはこういった熱エネルギーの移動を遮断して温度を一定に保ってくれる便利な容器も存在します。

そういった容器を魔法瓶と呼びますが、以前当ブログの記事でその仕組みについて解説しておりますのでぜひご覧ください!
魔法瓶の保温の仕組みや構造、熱の伝わり方を解説




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熱容量と比熱の違いとは?

では本題の熱容量と比熱の違いについて具体例を出して解説します。

熱容量とは?

前提条件として100gの水が入ったガラスのコップがあるとしましょう。

水100gの温度を15度から20℃まで上げると仮定し、この時の熱エネルギーQを求めるとします。

温度変化ΔT=5なので、100gの水を1℃上げるのに必要な熱量がわかれば熱エネルギーQもわかりますね。

ここで出てくる100gの水を1℃上げるのに必要な熱量こそ熱容量となります。

すなわち、熱容量とは質量mの物体の温度を1℃上げるのに必要な熱量となるわけです!


一般的に熱容量はC(heat capacity)という記号で表します、大文字であることに注意です!

求めたい数値は熱量です、これは単純に熱容量と温度変化分を掛け合わせれば算出されるので、以下のような式になります。

Q = C・ΔT [J]

上の式でわかるように、熱容量CはQ/ΔTとなるので単位は[J/K]となります。Kとはケルビンのことですが、これの単位はセルシウス温度(日常生活でよく使う℃のこと)と同じです。

比熱とは?

これに対して比熱(比熱容量とも言う)とは、熱容量をさらに細かく分けた数字となっています。

熱容量が任意の質量と説明されているのに対して、比熱は1gと規定されています、どの物体でも共通です。

すなわち比熱とは質量1gの物体の温度を1℃上げるのに必要な熱量となるわけです!


一般的に比熱はc(heat capacity)という記号で表します、小文字であることに注意です!
熱容量が大文字で比熱が小文字なので普通に両者を書き並べても見分けがつきにくいです、テストの答案用紙では誤解答になりやすいので気をつけましょう!


熱容量Cとの違いは質量が1gであるか否かなので、公式で考えますと、

c = C /m [J/k・m]

熱量Qを比熱cで表しますと、

Q = cmΔT [J]

となります。


※当然ですが比熱はどの物体でも質量に変わらない不変な数字となります。具体的にどういった数値になるのか、いろいろな物質の例を下に紹介しておきます。(単位にも注意してください!)

【いろいろな物質の室温における比熱】

  • 水:4.190
  • 海水:3.900
  • エタノール:2.430
  • ガラス:0.840
  • アルミニウム:0.900
  • 銅:0.386
  • 銀:0.236

※単位は全て[J/g・K]

上に紹介したように水の比熱は、4.19[J/g・K] と他の物体と比べてかなり大きめです。

質量が100gの時は419[J/K]となりますが、これを基に先ほどの熱量Qを算出すると、

Q=419×ΔT=419×5=2095 [J]

となります。

2095Jと言われてもピンとこないかもしれません。

具体的に例を出して解説すると、重さ100gの物体を1m動かすのに必要なエネルギーがだいたい1ジュールなので、2095Jということはこれの2000倍です。

つまり、重さ100gの物体を約2km動かした時に消費されるエネルギー量と匹敵します。

比熱は温まりにくさを表す!

比熱について解説しましたがやや理解しにくい部分もあったかと思います。

わかりやすく言えば、その物体の温まりにくさだと思ってください。

なぜかと言いますと、比熱は数値が高ければ高いほどその物体1gの温度を1℃上げるのに必要な熱量が大きいということになります。

熱量が大きいということは、それだけその物体について大量のエネルギーを与えないといけない訳です。


上に紹介した例でもわかるように金属系は比熱が小さいですね。水を入れて沸騰させたやかんが火傷するくらい熱くなっているは、それだけ熱が通りやすい証拠でもあります。

気温の年較差と日較差にも関係する!

他の例を紹介しますと、陸地と海の気温差でも比熱は関係してきます。

内陸性気候という言葉を地理の授業で習うと思いますが、これは気温の年較差や日較差が大きくなっているのが特徴です。

なぜ年較差や日較差が大きくなるかと言うと、陸地部分では比熱が小さいために海よりも暖まりやすく冷めやすくなっているからです。

逆に海は比熱が大きい(約3.9[J/g・K])ので温まりにくく冷めやすいのが特徴です、海洋性気候と言いまして特にヨーロッパやニュージーランドあたりはこの気候区分に該当します。

まとめ

最後になりますが改めてまとめさせていただきますと、

  • 熱容量はある物体の温度が1℃上がる時の熱量
  • 比熱は質量1gの物体の温度が1℃上がる時の熱量
  • 比熱はその物体の温まりにくさ、水は温まりにくく金属は温まりやすい

ということになります。

筆者自身も高校時代は理系でしたが正直物理は苦手でしたね、今回紹介した熱容量と比熱の違いについては何度も見直した記憶があります。

今受験勉強に頑張っている学生さんも復習がてらこのページを何度も参考にしてもらえたら幸いです♪

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