プロ野球もシーズン終盤になると、どこのチームがリーグ優勝するか、日本一になるかが凄く気になってきますよね。
しかし選手やファンの皆にとっては、もう一つ気になることがあります。
それがタイトル争いです。
中でも今回取り上げるテーマに関するのが首位打者、即ち打率です。
首位打者は野球でもポピュラーなタイトルですが、この首位打者の打率って一体どのくらいが最高の数字かわかりますか?
毎年首位打者の残した打率の数字を見てみると、だいたい3割5分前後と言った感じで、間違っても4割を超える数字が出てこないですね。
そういえば4割打者っているのかな?聞いたことないけど。
4割打者はプロ野球ではどうして出てこないの?
こういった疑問を抱いている人も多いのではないでしょうか?
今回は4割打者が本当にいなかったのか、また打率4割を残すことの難しさなど、詳しく解説していきます!
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シーズン打率4割の打者はいない?
100年近く誇る日本のプロ野球ですが、毎年そのシーズンで最も高い打率を残した打者に首位打者のタイトルを表彰しています。
その首位打者の歴代の打率ですが、概ね3割5分前後といった感じです。
では歴代で最も高い打率を残した選手の上位16人と達成年を紹介します。
- 打率.389:1986年 ランディ・バース(阪神タイガース)
- 打率.387:2000年 イチロー(オリックス・ブルーウェーブ)
- 打率.385:1994年 イチロー(オリックス・ブルーウェーブ)
- 打率.383:1970年 張本勲(東映フライヤーズ)
- 打率.383:1951年 大下弘(東急フライヤーズ)
- 打率.378:2008年 内川聖一(横浜ベイスターズ)
- 打率.378:1989年 ウォーレン・クロマティ(読売ジャイアンツ)
- 打率.377:1951年 川上哲治(読売ジャイアンツ)
- 打率.376:1936年 中根之(名古屋軍)※1リーグ時代
- 打率.374:2008年 ブルーム(近鉄バファローズ)
- 打率.369:1980年 谷沢健一(中日ドラゴンズ)
- 打率.369:1944年 岡村俊昭(近畿日本)※1リーグ時代
- 打率.367:1999年 ロバート・ローズ(横浜ベイスターズ)
- 打率.367:1985年 落合博満(ロッテオリオンズ)
- 打率.366:1987年 新井宏昌(近鉄バファローズ)
- 打率.366:1964年 広瀬叔功(南海ホークス)
歴代首位打者で数字が高い順に15人並べました、イチローが2回もランクインしていますね、やはり偉大です(;^^
ただこれを見てもわかるように、やはり打率4割を残している選手は1人もいません。それどころが3割9分以上もいません。
最も高い成績で1986年のランディ・バースの打率3割8分9里、後1分1里届きませんでした。
打率3割6分以上すら厳しい?
上の一覧を見てもらえれば、首位打者といえども、その数字の限界は約3割9分といったところです。
さらに調べると、1950年に2リーグに分裂して以降、両リーグの歴代の首位打者の人数(回数)は150以上となりますが、打率3割6分以上の人数は2018年までのシーズンで以下のようになります。
- 打率.380以上で4人(イチロー2回)
- 打率.370~380で5人
- 打率.360~370で14人
イチローの重複を除けば、たった22人です。極論を言えば、打率3割6分以上残せば、まず間違いなく首位打者が獲れると思っていいでしょう。
打率4割に最も近かった選手は?
歴代の首位打者の数字を高い順に並べてみましたが、こうして見ると打率3割6分以上の数字すら厳しい感じがします。
4割打者なんか夢のまた夢と思いたくなりますね。
だけど長いプロ野球の歴史を振り返ると、4割打者が誕生するようなシーズンもありました。
まず1人目に惜しかったのは、1986年のランディ・バースです。
上にも書きましたが、彼はこの年は最終的に打率.389という異例な好成績で首位打者となりました。
しかしシーズン中盤の7月2日の大洋戦では、打率を4割に乗せていたのです。
7月8日に打率.407を記録したのですが、それ以降はスランプに陥ってしまいます。
復調して9月頃には打率が3割9分以上をキープ、10月の残り試合で打率4割の可能性もありましたが、7日の大洋戦と広島戦で無安打になって、最終的に打率.389となりました。
2人目に惜しかったのは、1989年のウォーレン・クロマティです。
この年の彼は「4割を打って引退する」と宣言していましたが、その宣言通り開幕からヒットを量産して、シーズン規定打席に到達した403打席目で打率4割を超えていました。
規定打席到達時点で4割超えはバースですらできませんでしたが、その後は調子を落としてしまい、最終的な打率は.378まで落ちてしまいました。
しかしこの年は残念ながらバースが打率.389で首位打者となったので、クロマティの首位打者はお預けとなりました。
打率3割6分以上を二度も記録したのは、イチローと落合博満と彼だけです。
こうしてみると助っ人外国人の凄さが伺えますね。外国人選手は元メジャーリーグ選手ということで、やはり日本のプロ野球選手にとっても憧れの存在です。
しかしそのメジャーリーグでは、実は日本以上に凄い打率だったことが判明しました!
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メジャーリーグは4割打者が多くいた?
これまでは日本のプロ野球での話でしたが、実はメジャーリーグに目を向けると、何と過去には数名の4割打者がいたのです。
もちろん昔と言ってもそれこそ何十年も前の話です、戦前くらいにさかのぼります。
メジャーリーグは日本より長い歴史を誇りますが、戦前には打率4割が8人の選手によって13回も達成されました。
この内、タイ・カップとロジャース・ホーンスビーが3回、ジョージ・シスラーが2回記録しています。
ただしいずれも戦前の記録で、最後に達成したのは1941年のテッド・ウィリアムズです。
テッド・ウィリアムズ選手以降4割打者が生まれない理由として、とある古生物学者は
「ルールの細かい改正が行われたことや、打者の能力が時代がすすむにつれ向上して、打者の能力が全体的に向上した結果だ」
と語っています。
戦後で最も惜しかった選手は?
メジャーリーグは戦前だと13回も打率4割が記録されていますが、戦後となると打者能力が全体的に向上したのか、4割打者が出てこなくなりました。
しかし打率4割こそいなくなったものの、3割9分以上に関しては、
- 1980年にロイヤルズのジョージ・ブレッドが.390
- 1994年にパドレスのトニー・グウィンが.394
- 残り全試合欠場する
- 打席に立ってもひたすら犠打やフォアボールにこだわる
と2回達成されています。
打率.394もほぼ打率4割と変わらないですね(笑)
やはりメジャーリーグは凄い世界です。
因みに2000年にロッキーズのトッド・ヘルトンが規定打席に達した時点で4割を超えていましたが、その後の試合ではやはり打率を下げてしまいした
なぜ4割打者が生まれない?
4割打者が生まれない現象は、現在では日本プロ野球とメジャーリーグ双方に共通しています。
しかしプロ野球やメジャーリーグ以外に目を向けると、実はそうでもないようです。
特にアマチュアや高校野球、さらにプロ野球の2軍戦に目を向けると、1シーズンで4割以上の打率を残す選手はたまに出てきます。
これについては、単純に選手間の能力差が大きく開いているかが大きな要素ですね。
あるいは木製バットではないということも影響しているかもしれません。
女子プロ野球に至っては、5割打者もいるみたいです(笑)
しかしプロ野球の場合は、何と言っても選手層がどこのチームも相当厚いのが特徴で、各球団にそれぞれ優秀な先発、中継ぎ、抑え投手などがいます。
もちろん投手力が極めて弱いチームもあれば、強いチームもありますが、どのチームとも同じ試合数を消化します。
仮に1人の投手やチームとの対戦で相性が良くても、他のチームとの対戦で同じになるとは限りません。
投手力だけでなく野手の守備能力の高さや、ボールの硬さ、木製バットの使用も影響するでしょう。
さらに大学生や社会人、助っ人外国人、甲子園に出場する強豪校の高校生だった選手が全員揃っているので、ちょうどよいレベルで落ち着くといった感じですね。
試合数の多さが関係?
他にも大きな理由としては、プロ野球は試合数が多すぎるということも挙げられます。もしかしたらこれが一番大きな要因かもしれません。
これまでのシーズン首位打者で最も4割に近かった選手は何人かいます。
打率3割7分以上残している選手は、ある意味惜しかったと言えます。
だけどここで大きな壁となるのが、やはり試合数なのです。
ランディ・バースもウォーレン・クロマティも試合数、あるいは打席数が少なければ打率4割に到達していました。
基本的には打率は試合数が少なければ高い数値になります。
打率の定義をおさらい!
そもそも打率ってどうやって求めるんだ?
ここで打率の定義を改めて解説しますと、
安打数を、打席数からフォアボールや敬遠などを除いた打数で割った数値
つまり
打率=安打/(打席-打数)
となります。
仮に500回打席に立ったとしても、打数は500にならず、四死球やバント、犠牲フライなどを除いて約450近くまで減ります。
打者が4割以上の成績を残すには、1試合で回ってくる打席は最低でも3回なので、最低でも1.2本以上打たなければいけません。
当たり前の話ですが、ヒットを打たないと打率はいつまで経っても上がりません。
しかし毎試合ヒットを打つのはほぼ不可能です。
試合数を重ねるごとにヒットの数は増えますが、それ以上に凡退の数が増えるので、最終的に打率はどんどん下がっていきます。
さらに首位打者に届くには、規定打席に到達することも必要となります。
仮に140試合出場して、毎試合4回打席に立った打者がいたとして、四死球・バント・犠牲フライの数が合計50だったとすると、
打数=510
なので、4割を残すには、
510×0.4=204
つまり204本はヒットを打たないといけません。
200本安打でも達成は困難?
1シーズンで200本以上ヒットを打つのは並大抵のことではありません。
日本のプロ野球でこれまで200本以上ヒットを打った選手は、イチローなどを含めてもたった6人です。
最近だと2015年に西部の秋山選手が記録した216本が最多だね。だけど打率は.358で、4割には全然届いていないけど。
確かに秋山選手の216安打は凄い数字ですね。
しかし秋山選手の場合は打席数に対して、四死球数が少なかったことが響きました。
算数の問題になりますが、打率は安打を打数で割るので、分母の打数が小さいほど大きな数字になります。
2015年の秋山選手の打席数は675でしたが、打数は602で、そこまで小さくできたわけではありません。
打数を減らせばいい?
ていうことは打数が小さいほど打率4割に届きやすくなるのか!
はい、まさしくその通りです。
ヒットを打つことを捨てて、ひたすらフォアボールやデッドボール、犠打、犠牲フライを狙っていけば、打率4割に到達しやすくなるでしょう。
普通に打席に立って打っても、凡退に終わったらその分打率が落ちます。
もちろんこの場合だと最多安打のタイトルを捨てる必要が出てきます。
また打率は下がりませんが、肝心の打数は変化しないので、打率は上がることもありません。
よって仮に打率4割を残している選手がいたとしたら、その選手は規定打席に到達後、
の2つのパターンで、安全に4割をキープできます。
ただしこの2つも結局実現することはほぼできません。
1のパターンは大きな怪我でもしない限りは起きません。
また4割という成績を残せる選手は、そのチームの主力であり簡単には外せません。優勝争いしているのなら尚更です。
2のパターンは打席に立っても、全打席でバントやフォアボールを狙うことになるのですが、これもほぼ不可能です。
そもそも4割打者はヒットを量産できる可能性があるので、仮に1塁に選手がいたとしてもバントなんかしませんし、チームがさせません。
見てるファンからしても興ざめです。
となるとやはり打つしかなくなりますが、こうなると相手チームの投手力が大きく影響します。
プロの選手といえども、多少の絶不調の波があります。
というより4割近くの打率を残している時は、絶好調の時です。
しかし相手チームのバッテリーの攻め方が厳しかったり、またデッドボールなどのアクシデントが襲って、調子を落とすことは珍しくありません。
投手がよく打者に対して内角攻めを行うのは、打者を苦しめるのが狙いです。
それに打者の心理的にかかるプレッシャーが大きくかかります。
ましてや4割近くの成績だと、それにかかるプレッシャーは相当なものでしょう。
心理的に「打ちたい!」と強く思ってしまいますが、意識し過ぎると緊張してしまい、本来のパフォーマンスができません。
優勝争いも絡んでくると、相手チームの投手も必死になって尚更難しくなります。
実力差が大きく空いているアマチュア野球と違って、相手選手もプロなので、やはり簡単にはいかないのですね。
バースやクロマティも打率4割に到達後も、試合に出場しつづけましたが、やはりこういった側面も影響して調子を落としました。
クロマティに至っては規定打席に到達していたので、もし彼がその後試合に出場していなかったら、初の4割打者となっていましたね。
短期決戦だとたまに打率4割とか5割近く打って大当たりする選手がいますが、あくまで参考記録に過ぎません。
リーグ戦は長い試合数を消化するので、日本シリーズなどの短期決戦とは違う難しさがあります。
まとめ
今回は4割打者について、なぜ出てこないのかその理由について詳しく考察しました。
長くなりましたが最後までご覧いただきありがとうございます。
4割打者はやっぱりプロ野球やメジャーリーグでも、ほぼ実現不可能な数字です。
近年のプロ野球は投高打低の傾向が強いので、尚更見れないですね。
因みにこれまでで最も打率4割に近づいた選手は、イチローを除けばバースとクロマティ、いずれも外国人選手です。
もしメジャーリーグでトップクラスの成績を残した大物選手が、日本のどこかのチームに移籍でもしたら、本当に4割打者が誕生するかもしれませんね。
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