ワット(W)と言えば電力の単位として学校でも習うのでお馴染みですね。
日常生活でも電力代を計算するために用いられる単位なので、ワットを聞く機会は多いでしょう。
しかしこのワットという単位はあくまで電気のエネルギーなわけですが、他の単位にも変換できる方法をご存知でしょうか?
一番有名なのが力学の「仕事」として使われる「ジュール(J)」です。
そして炭水化物の単位としてもお馴染みな「カロリー(cal)」にも変換出来ちゃいます!
ワットとジュールとカロリー、全部同じエネルギーってこと?
3つのエネルギーって全然違うものって思ってたけど、それぞれどう結びつくの?
物理の授業でも習ったけど、どう換算すればいいか忘れちゃったな。
何となくエネルギーっていう意味では同じとイメージはできていますが、それぞれの定義がどうなっていて、どう換算すればいいのか詳しく把握できているでしょうか?
受験にも出題される可能性は高いので、今回は改めて3つのエネルギーの違いと換算について詳しく見ていくことにしますよ!
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ワットとジュールとカロリーの換算!
ワットとジュールとカロリー、それぞれ3つのエネルギーはどう換算すればいいのでしょうか?
結論から言いますと、3つは以下の関係が成立します。
W=J/s=0.239cal/s
このような関係になるのですが、いきなりこんな等式が出てもちょっと混乱しますね。
ということで簡単にですが、まずは3つのエネルギーについて大まかな定義を紹介します。
- ワット(W)とは、1秒間に1ジュールの仕事率
- ジュール(J)とは、1ニュートンの力で物体を1メートル動かす時の仕事
- カロリー(cal)とは、水1gの温度を1℃上げるために必要な熱量
それぞれの定義はこうなりますが、ここでハッキリわかったのはワットとジュールの関係ですね。
ワットが1秒間に1ジュールの仕事率で、秒の単位をs、ジュールの単位をJとすれば、ワットの単位は
W=J/s
という関係が成り立ちます。
ただしジュールの定義は「1ニュートン(N)の力で物体を1m動かす時の仕事」と同じなので、これを記号で表すと
J=N・m
にもなります。
つまり「W=N・m/s」と同義です。
これで次はジュールとカロリーとの関係がわかればそれぞれの換算も可能です。
ジュールとカロリーについては、実は同じ熱量として以下のような関係が成り立っています。
1cal=4.18J
現在の計量法に基づく換算ですが、簡単に言えば水の比熱から計算された数値です。
よってそれぞれの関係から、ワット(W)とジュール(J)とカロリー(cal)の換算はこうなります。
W=J/s=0.239cal/s
仮にワットをジュール換算で表記したい場合は、calで表記された数値の4.18倍を行えばいいわけです。
逆にワットをカロリー換算で表記したい場合は、Jで表記された数値を4.18で割ればOKです。
以上で簡単な換算方法についての説明は終わりです。
ただし3つともどことなく繋がりにくいイメージが拭えないかもしれません。
ワットは「電力」って習ったけど、ジュールと同じってこと?
3つのエネルギーの中でも、ワット(W)は電力の単位で習った人も多いでしょう。
にもかかわらず、仕事の単位であるジュール(J)で換算できるのはちょっと腑に落ちないかもしれません。
また1カロリーがどうして4.18ジュールになるのかもちょっと疑問ですよね。
ということでここからは、ワットとジュールの関係とジュールとカロリーの関係についてより詳しく見ていきましょう!
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ワットとジュールの関係とは?
まずは電力の単位ワット(W)と仕事の単位ジュール(J)の関係からです。
この2つについては前章でも触れたように、「W=J/s」という関係が成り立ちます。
この定義から、電力は1秒間における仕事率という意味にも捉えることができます。
仮に500Jの仕事を50秒間で終えたら、1秒間当たり10Wの仕事をしたこと(仕事率=10W/s)になります。
でもそもそもどうして、電力が仕事率と同じことになるんでしょうか?
ワット(W)は電力として、以下のような式で覚えていた人も多いと思います。
W(電力)=V(電圧)×A(電流)
通常ワットはこのように電圧と電流の掛け算として求める方が、学生にとってはポピュラーと思います。
現代社会において欠かせない電気ですが、電気代を計算するのに大事な指標が電力です。その電力は電圧と電流の2つがわかれば計算で求まりますが、どういった関係性があるのでしょうか?簡単な覚え方と電力量との違いについてご説明していきましょう!
しかし今回お話しするのは、力学系におけるワットです。
力学系で特にエネルギー関係のお話になると、ワット(電力)は熱エネルギーのジュールへの変換としても頻繁に登場します。
そしてさらに知っておいて欲しいのが、ジュールを別の公式で求める方法です。
そもそもどうして電力が上のような電圧と電流の掛け算になるかといいますと、これは1ボルトの電圧の中で電荷(クーロン=C)を動かすための仕事率を計算しているからです。
つまりジュール(J)と電荷(C)と電圧(V)において、
J=C・V(クーロン・ボルト)・・・①
という関係も成り立ちます。
よって電力Wは上の①式から、
W=J/s=C・V/s・・・②
とも表せます。
また電流とはそもそも単位時間における電荷の移動量を意味します。
つまり電流(A)と電荷(C)は単位時間(s)において、
C=A・s
という関係が成り立ちます。
この式をさらに変形すると、「A=C/s」となり、電流は電荷と時間の割り算にもなります。
ここで電力の公式である「W=V×A」に代入しますと、
W=V×C/s=C・V/s
となり、上の②式と一致することがわかりますね。
さらに「J=C・V」なので、当然「W=J/s」となり、これはワットの定義である「1秒間に1Jの仕事率」と一致します。
一見何の関係もなさそうに見えたワットとジュールも、元々の電荷の仕事から計算すれば、見事に一致することがわかりました。
「ジュール」という名前の由来は、イギリスの物理学者ジェームズ・プレスコット・ジュールから来ているよ。
LEDの電力をジュールに例えると?
ではここからはより具体的に電力とジュールの関係を見てみましょう。
消費電力が50Wの12畳向けのLEDシーリングライトを、10秒間点灯させると仮定します。
この時消費される電力をジュールに換算すると、「J=W×s」から
50×10=500(J)
となります。
では、今度はこのジュールを力学系で例えてみます。
ジュールの正式な定義が「1Nの力で物体を1m動かす時の仕事」でした。
すなわち「J=N・m」なわけですが、500Jというのは、1Nの力で物体を500m動かした時の仕事に匹敵します。
だけどこれではイマイチイメージが掴みづらいですね(;^ω^)
そもそも1ニュートン(N)が何なのかが、わかりにくいでしょうが、それについては以下の記事で詳しく説明しています。
物理の授業で習うことになる力の単位ニュートン(N)はその具体的なイメージがしづらいですね。今回はニュートンの定義について、㎏f(キログラム重)との換算も合わせてわかりやすく解説していきます!
上の記事でも述べているように、1Nとはだいたい100gの物体を持った時の力と同じです。
よって500Jとは、100gの物体を5m持ち上げた時の仕事、あるいは500gの物体を1m持ち上げた時の仕事と匹敵します。
因みに500gとは、500mlのお茶のペットボトルと同じ重さです。
以上をまとめれば、50WのLEDシーリングライトを10秒間点灯させれば、500mlのお茶のペットボトルを1m持ち上げた時の仕事に匹敵します。
ジュールとカロリーの関係とは?
では次に仕事の単位ジュール(J)と熱量の単位カロリー(cal)の関係についてです。
両者の関係は至ってシンプルで、「1cal=4.18J」(あるいは1J=0.239cal)という等式が成り立つだけです。
「カロリー」という言葉の語源は、「熱」を意味するラテン語の「calor」から来ているよ。ワットとジュールと違って人物名由来じゃないから気を付けて!
単純にカロリーの数値を4.18倍したのがジュール換算で、ジュールの数値を4.18で割った数値がカロリー換算です。
ただしカロリーという単位については、現在では人もしくは動物が摂取する食べ物のエネルギー量の計算に限定して使用できる単位になっています。
カロリーの元々の正式な定義は、「1グラムの水を標準大気圧下で1℃上げるために必要な熱量」となります。
ここで登場するのが水の「比熱」と言う言葉で、単位質量の水を1℃上げるのに必要な熱量を意味します。
まさにカロリーの定義そのものなので、カロリーは水の比熱の数値である4.18Jから来ているのです。
言い換えれば水の比熱は1calでOKなんですが、それ以外の物質の比熱は1calではないので注意してください!
- 0℃の氷:2.1J or 0.5cal
- 銅:0.39J or 0.09cal
単位質量の物質を1℃上げるのに必要な熱量を意味し、単位は[J/g・K]です。
※Kは絶対温度ケルビンの単位です。
学校の理科の授業で習う熱容量と比熱は熱力学で必ず出てくる項目です。似たような言葉ですが、改めて両者の違い、さらに比熱の意味と物質ごとの数値について深く掘り下げて解説していきます!
因みに食べ物では、calの1,000倍を表す「kcal(キロカロリー)」がよく用いられます。
成人男性の1日の摂取カロリーの換算!
では以上の知識を踏まえた上で、成人男性が1日に摂取する平均カロリーをジュール(J)と消費電力(W)で換算してみましょう!
厚生労働省の発表によれば、成人男性が1日に摂取する平均カロリーは約2,600kcalとされています。
この平均カロリー量をJで換算するには、「4.18×2,600×1000」を計算すればいいので、その答えは
4.18×2,600×1000=10,868,000(J)=10,868(kJ)
となります。
これを家電の消費電力で例えるとどうなるでしょうか?
ジュールとワットの関係は「J=W×s=電力×時間(秒)」でしたね。
ここで10,868≒10,800で、これを3,600秒(s)で割ればほぼ3時間です。(1時間は3,600秒と同じです。)
よって3時間で1,000W(=1kW)の電力を消費したことと同じ意味になります。
1秒間あたり1,000Wというのは、ドライヤーやヒーターなど、消費電力が高い家電が該当します。
以上をまとめると、成人男性が1日に摂取する平均2,600kcalは、ドライヤーやヒーターを3時間連続で付けた時と同じ分の電力ということが言えます。
因みに1時間当たりの電力を時間(h)で掛けた数値は電力量(kwh)と呼びます。
1時間当たりの電力Wは3,600J、すなわち
1wh=3,600J
です。
3時間分の電力と言うことは、3whですが一般家庭の生活家電においては単位はkwhが主流なので、
3kwh=3,000×1whとなります。
まとめ
今回はワットとジュールとカロリーの換算と関係についての解説でした。では今回の内容をまとめておきます。
- ワットとジュールとカロリーの換算は、「W=J/s=0.239cal/s」
- 1ジュールは1ボルトで1クーロンの電荷がする仕事と同じ
- 50WのLEDライトを10秒間点灯したら、500gの物体を1m持ち上げた時の仕事に相当
- カロリーは水の比熱の数値である4.18Jから来ている
- 成人男性が1日に摂取するカロリーは、ドライヤーやヒーターを3時間付けた時と同じ分の電力に相当
ややこしかったと思われるワットとジュールとカロリーの関係、これにてスッキリ理解できましたでしょうか?
カロリーも減らせばダイエットになって健康に良さそうですが、電気もそれと同じで消費量を減らすことで経済的に良くなります。
どっちも同じエネルギーだって思えば何となく理解できますが、両方とも減らすのは何気に難しいですね。
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以下では色々とイチャモンをつけるような記述になりますが、ご容赦下さい。
このサイトは「エネルギー量」と「仕事率(1 sあたりのエネルギー量)」を混同しているように思われます。
J と cal はエネルギー量、W = J/s は 1 秒あたりのエネルギーです。ですから、J と cal は同じ次元ですが、W は次元が異なります。J と cal に相当するのは Wh です。この観点から、cal, J, W が矢印で結ばれた図は違和感があります。
wh ではなく Wh だと思います。
「3時間で1,000W(=1kW)の電力を消費した」は変だと思います。
「1 kWの電気機器を 3 時間使用したので 3 kWh の電力量を消費した」が妥当な使い方だと思います。
W は 1 秒あたりのエネルギーを表すので「1 秒あたり 1000 W」という表現はおかしいと思います。
「3時間分の電力と言うことは、3whです」はおかしいと思います。1 Wの電気機器を 3 h 使用すると 3 Wh ですし、3 W の電気機器を 1 h 使用しても 3 Wh です。
500 J は 50 kg のものを 1 m 持ち上げるエネルギーだと思います。
比熱の説明において、単位質量を 1 g の意味に使っています。位置エネルギーを求める式 mgh では、質量の単位は kg です。1 g とすることに違和感があります。