仕事や学校の行き帰りなどで電車を利用する人は多いでしょう。

その電車は発電所からその電気を得ることで走っています。この辺りは一般家庭への送電と同じです。

発電所から送られる電流は交流電流というのは有名ですね。一般家庭のコンセントに送られている電流は交流となっています。


ところが電車の場合、一般家庭と大きく違う点があります。

それが今回ご紹介する電化方式の話ですが、実は電車は

  • 変電所で直流に変換してその電気を得て走る直流電車
  • 変電所を介さずそのまま交流の電気を得て走る交流電車

の2種類があります。

つまり直流で走る電車もあれば、交流で走る電車もあるのです!

ちょっと驚きですよね。


直流電車と交流電車って一体どこがどう違うのか?

そもそもなぜこの2種類があるのか?

今回は両者の違いについて、それぞれが走っている区間も合わせて詳しく探っていきます!




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直流電車と交流電車の違いって?

いきなり結論から申しますが、直流電車と交流電車の違いを一言で簡潔にまとめます!

  • 直流電車は、発電所から送られる交流電流が変電所で直流に変換され、その直流電流が流れる区間を走る電車
  • 交流電車は、発電所から送られる交流電流がそのまま流れる区間を走る電車

イントロでも少し触れましたが、基本的な違いとしてはこうなります。

電気は発電所から生まれ電線を伝って送電されますが、その送電方式は交流となっています。

★直流と交流の違いは以下のようになります。

  • 直流とは、常に一定の電圧で流れる電流(乾電池や車のバッテリーで発生する電気)
  • 交流とは、電圧がプラスとマイナスで交互に切り替わる電流(電線を流れる電気)

実は一般の家電製品について言えることですが、基本的に電化製品を動かすには交流のままでは不向きで、内部にある整流器という部品で直流に変えてから動かすという流れになります。

代表的なのがノートパソコンで、電源コンセントに繋ぐケーブルに直方体のACアダプタがありますね。

これを使ってコンセントから流れていた交流電流を直流に変えているわけです。


実は電車についてもこれと同じことが言えます。

つまり最終的に電車を動かすために電流を直流にするわけですが、これを変電所で行うのが直流電車で、電車内で行うのが交流電車です。

ただし交流電車については、交流電流をそのまま電動機(モーター)に利用する方式も採用されています。


ではどうしてこの2種類の電車が生まれたのでしょうか?

最終的に交流を直流に変えて、その電気で動くという点では変わりないのですが、なぜ統一させないのでしょうか?

調べてみると、それぞれの電車のメリットとデメリットに大きく関係していたのです。詳しく見ていきましょう!




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直流電車について解説

では直流電車について特徴とメリット・デメリット、走っている地域を詳しく見ていきましょう!

直流電車の特徴とは?

直流電車についてもう一度おさらいしますと、発電所から送られる交流電流を変電所で直流に変換された電気を受け取り、それでモーターを動かして走るという構造となっています。

発電所から送られてくる電流は超高圧なので、まずは変電所で下げてそれを整流器で交流から直流に変えて、架線に流します。

架線の電圧としてはモーターの電圧の上限である3000Vまで選択できますが、現在の日本で最も多く使われているのは1500Vです。


歴史的に見ても先に登場したのが直流電車の方で、1879年のドイツで世界初となる走行が実現しました。

第二次世界大戦後に交流電化が普及するまで、鉄道の電化方式と言えば直流だったのです。

直流電車のメリットとデメリットは?

さて一度変電所で交流から直流に変える作業を挟むわけですが、このような特徴により以下のようなメリットとデメリットが生まれます。

  • メリット
    1. 車体の構造がモーターだけとなるため、低コストでの製造が可能
    2. 絶縁距離が小さいので周囲の建築物との距離が縮められる
  • デメリット
    1. 変電所を設ける必要があり地上でのコストがかかる
    2. 磁場が発生するので、磁気を測定する場所及びその周辺では使用できない

メリットの①について、電車内で交流に変換する整流器を用意する必要がないので、車両を安く製造できます。そのためより多くの人が利用する大都市圏では、安いコストで多く車両が製造できる直流電車の方が向いています。

また②については、直流送電の場合だと絶縁距離が小さくなるという性質があるので、例えばトンネルを利用した地下鉄での走行に向いています。

反対にデメリットの①については、交流を直流に変換させるのに鉄道変電所を建てる必要があるので、どうしてもその分のコストがかかります。

具体的にどういった鉄道変電所があるのかについては、以下の記事が参考になります。
直流電化線の鉄道変電所

また②については、直流電流を導線に流すことで漏洩電流が発生しその周りに磁場が発生する、いわゆる右ねじの法則に基づいています。

これも学校の物理の授業で習うかと思いますが、この性質のため地磁気の測定に影響が出やすく、後述する一部区間では直流電車が使えなくなっています。

直流電車が走っている地域は?

これまで直流電車のメリットとデメリットについて解説しましたが、次にどういった地域を走っているのか詳しく紹介します。

【直流電車が走っている地域と車両】

  • JR線は関東、中部、関西、四国、中国の5地域
  • 全国の私鉄と地下鉄(1部を除く)
  • 全国の路面電車

関東都市圏のJRの在来線はほぼ直流電車と言ってもいいです。

こうしてみると日本の大半の地域では直流電車が用いられているのがわかります。


最大の理由は車両の製造コストが関係しています。

直流電車のメリットは、電車内で交流に変換する必要がないので、車両を安く製造できることでしたね。都市部となると利用する人が多いので費用対効果の関係上、やはり車両が多いに越したことはありません。

鉄道変電所のコストが多少かかっても、電車の数を増やして利便性を高めることの方が大事なのです。


ただ四国や中国地方は、そこまで都会というイメージがしないですよね。

こういった地方では人口が集まる瀬戸内海側では直流電化の路線が走っているのですが、その他の地域(山陰や高知、徳島など)ではそもそも電化路線自体が少ないのです。

このような路線では電車ではなく、ディーゼルエンジンを積んだ列車が走行しています。詳しくは以下の記事をご覧ください!

交流電車について解説

では交流電車について特徴とメリット・デメリット、走っている地域などを詳しく見ていきましょう!

交流電車の特徴とは?

交流電車についてもう一度おさらいしますと、発電所から送られる交流電流が流れる電化区間で走る電車を指します。

交流電流なので、基本的には電車内の整流器で直流に変えて、それでモーターを動かすという構造となっています。

また発電所から送られてくる超高圧な電圧も下げる必要があるので、変圧器も電車内に搭載する必要があります。


そもそも交流電車が誕生した経緯は、何と言っても発電所から送られる電車が交流だったからです。

交流送電の最大の利点は、変圧が容易なため遠方に簡単に送電できることなので、長距離路線を電化する際には交流方式が優位と考えられ、19世紀末にはスイスで世界初の交流電化が行われました。

ただし初期の頃の交流電車は交流電流をそのままモーターに用いていましたが、速度制御の難しさから普及するには至りませんでした。


1950年代になってフランスで実用化されたのは、電車内に整流器を備えて架線から取り入れた交流を直流に変換して、それでモーターを駆動するという方式でした。

そして20世紀後半になると、交流電流をそのまま使ってモーターを駆動させるVVVF方式も誕生しました。

電圧と周波数を自由に可変制御できる電源のことで、これがあれば電気エネルギーの節約も可能となったのです。

交流電車のメリットとデメリットは?

交流電車は交流電流をそのまま利用できるのですが、これにより以下のようなメリットとデメリットが生まれます。

  • メリット
    1. 地上の設備費用は安くて済む
    2. 電力の無駄が少なくなる
    3. 大きなエネルギーで長距離走行することが可能
  • デメリット
    1. 車両を製造するコストが高くなる

メリットの①について、交流電流がそのまま利用できるので、直流電流に変えるための変電所を建設する必要がありません。

また②については、直流電車では電圧を制御するため抵抗器を用いて、エネルギーの一部が熱として捨てられていました。一方交流電車では、電圧が直接制御できるので、無駄なく電力が利用できます。

さらに③については、直流に比べて大電圧なので、長距離で大容量の電力が送電できます。よって長距離かつ高速で走る新幹線に最適なのです。

反対にデメリットについては、直流電車と逆になり、電車内で交流に変換する整流器、及び電圧を下げるための変圧器を搭載する必要があるので、車両の製造コストが高くなります。

交流電車が走っている地域は?

それでは交流電車が走っている地域と、採用されている車両について詳しく見ていきましょう!

【交流電車が走っている地域と車両】

  • JR線は九州、東北、北海道の3地域、及び常磐線と北陸の一部路線
  • 新幹線全線

直流電車が5地域だったのに対して、交流電車はほぼ3地域のみの運用です、少ないですね。

交流電車は、電車内で交流に変換する必要があるので、車両コストが高くなります。そのため利用者が比較的少ない地方路線での運用のみとなっています。

またこれらの地域でもやはり非電化路線があって、ディーゼルエンジンを積んだ列車が走行しています。


しかしこれらの地域でも福岡と仙台、札幌などは比較的都会で人口も多いですよね?

「それなら車両数を増やすために直流電車にした方がいいのでは?」という意見も出てくるでしょう。

だけど一概にこうも言えない事情もあるのです、その理由は次に紹介する交直流電車とも関係しています。

交直流電車とは?

交直流電車とは、その名の通り直流電化路線と交流電化路線のどちらも走ることが出来る電車のことです。

言い換えれば、直流電車にもなれるし交流電車にもなれます。


電車内に整流器と変圧器の両方が搭載されているのは交流電車と変わりませんが、直流電化の区間では直流側に切り替わります。

当然車両の製造コストもかかるのですが、こういった電車を製造しないといけない事情が出てきました。

歴史を振り返れば、直流電車の方が先に出てきたわけで、これらの電車は当然直流電流が流れる区間しか走れません。


しかし一方で九州や東北、北海道などは交流の区間しかなく、直流電車が走れません。

これらの地域と路線を繋げるとしたら、交流電車を新たに製造する必要があったのですが、コストの高さと人口の少なさから考えても合理的ではありません。

それならいっそのこと、「両方の区間を走れる交直流電車を製造した方がメリットは大きいだろう。」と判断したわけです。

国鉄民営化後は流れが変わる?

しかしこの流れが変わったのが国鉄(現JR)の民営化後です。

これ以降はJRグループ各社が、運用が局地化したことと、地方路線の拡大もあって交流区間のみを走る交流電車の数を増やしていきました。

反対に交直流電車を全国展開するメリットの方が少なくなっていきます。

直流電化と交流電化が両方ある路線とは?

交直流電車は直流が流れる区間と、交流が流れる区間の両方が合わさった区間を走る電車です。

ではその両方が存在する路線の区間を具体的に紹介します。

  • 東北本線の東京-黒磯駅間は直流、以北は交流
  • 北陸本線の米原-敦賀駅間は直流、敦賀-金沢駅間は交流
  • 羽越本線の村上-間島駅間は直流、以北は交流
  • 常盤線の日暮里-取手駅間は直流、以北は交流
  • 水戸線の小山駅のみ直流、小山-小田林駅の間から交流
  • 七尾線の津幡駅以外は直流、以西は交流
  • 山陽本線の下関-門司駅間が直流、以西が交流

これらの路線では直流と交流の2つの区間があるので、まさに交直流電車が走っています。


ただし該当の区間に電車が入っても、瞬時に「直流→交流」、「交流→直流」と切り替えることはできないので、電流を流さない区間を挟んで、異なる電化路線を繋いでいます。

この区間のことをデッドセクションと呼んでいて、電気が全く供給されないので惰性で走行する形となります。

通常架線は銅を主成分としているので、直流と交流の2種類の電気が混じりやすいです。そのためガラスでできたプラスチックの棒などを使って、絶縁処理を施しています。

因みにこのセクションを通過する際には、電車内で独特な機械音や動作音が聞こえたりします。

またそもそも電流が流れないので、少しの間電車内の明かりが消えます。車掌のアナウンスが流れるので、この区間の電車に乗る機会があったら、一度聞いてみてください。

地磁気の影響で交直流電車を使用する場所とは?

異なる電化の路線が繋がっている区間は、交直流電車が走っているのですが、実は別の事情で走っている場所もあります。

その事情とは先ほども少し紹介した磁気への影響です。


茨城県石岡市に気象庁地磁気観測所という場所があるのですが、ここでまさに地磁気を正確に測定しています。

この近所を走る電車はまさに直流電車だったのですが、先ほども紹介した電流を流すと磁気が発生するという性質のため、地磁気が正確に測定できない問題が起きたのです。


特に直流の場合は漏洩電流が交流よりも大きくなりやすいので、この地帯周辺にある

  • 常盤線(藤代-岩沼間)
  • 水戸線(小田林-友部間)
  • つくばエクスプレス(守谷-つくば間)

の区間だけは交流電化にすることにしました。

まとめ

今回は直流電車と交流電車の2つの違いと区間についての解説でした。簡単にですが最後にまとめです。

  • 直流電流が流れる区間を走るのが直流電車、交流電流が流れる区間を走るのが交流電車
  • 直流電車は交流電車よりも走っている地域が多く、車両のコストが安いが変電所などのコストがかかる
  • 交流電車は大容量の電力を長距離で送電できるため、新幹線に向いている
  • 直流区間と交流区間の両方を走る交直流電車もある
  • 地磁気の測定の影響で交流電化にしている区間もある

同じ電車でも直流か交流のどっちかで走る電車もあれば、両方でも走れる電車があったというのは驚きですね。

電車という乗り物がいかに複雑で奥が深いかがわかります。今回の記事を理解すれば、鉄道マニアに自慢出来るかもしれませんね。


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