物質の最小単位といえばみなさん何を思い浮かべますか?
恐らくほとんどの人が学校の理科の授業で学習した原子と答えるかもしれません。原子とは古代ギリシャの哲学者デモクリトスが提唱した概念的な存在でしたが、20世紀前半に元素の最小単位としてその存在は実証されました。
ところがこの原子よりも小さい粒子と言えばその原子を構成する電子や陽子がありますが、これだと物質の最小単位と言う言葉の意味に矛盾していないか?と疑問を持つと思います。
ここでこの矛盾を解決した概念が素粒子と呼ばれるものです。素粒子と言う言葉自体は聞いたことがある人も多いと思いますが、実際に学校の授業で学習することはないはずです。素粒子は厳密に言えば『素粒子物理学』で学習する内容になりますが、大学などの高度な教育機関でしか学習しません。
今回は改めて原子と素粒子の違いについて詳しくまとめてみましたので、興味のある方はぜひご覧ください!
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原子について解説!
原子とは一言で言えば元素の特色を失わない範囲で達し得る最小単位・微粒子のことを意味します。ただし哲学の分野では世界の構成要素となる、単一不可分の粒子という意味にもなります。
古代ギリシャにおいて物質と言うのは極めて小さく不変の粒子から成り立っているという考え・概念が既にありました。哲学者レウキッポスやデモクリトスらがその考えを提唱したのですが、当時としてはあまり評価されず人々の間からは徐々に忘れ去られていきました。
しかしこの仮説は19世紀初頭のイギリスの化学者ドルトンによって再び日の目を見ることとなります。彼は化学反応の前後の物質の質量の変化に注目して、物質には原子と分子という単位があるという説を述べました。
その後いろいろな科学者らによって原子のモデルは提唱されました。現在の理科の教科書では原子は中心に原子核があり、その周りを電子が回っているという構成(いわゆるボーアモデル)になっていると書かれています。
さらに原子核自体も陽子と中性子と言う粒子から成り立っていて、このことからも原子というのは、それよりも小さい3つの粒子で構成されていることがわかります。
つまり物質を構成する最小の単位という意味ではありません。逆に言えば全ての物質は原子ではなく、陽子・中性子・電子の3つの粒子から成り立っているという表現も出来るのです。
それまでは科学の世界でも原子は分割不可能な単位という概念で通っていましたが、近代の研究でこうした内部構造が明らかになったことで、原子というのはあくまで元素が元素としての性質を保ち続けることができる限りにおいての最小単位に過ぎないという事実に変わってきました。
例えば鉄と言う物質を考えてみることにしましょう。
鉄は身近な金属で誰もが目にしたことはありますが、化学的に説明しますと元素Feのみで構成される物質です。鉄の原子と言うのは化学の周期表で習ったかもしれませんが、原子番号26の遷移元素ですね。
原子番号とはその原子が原子核の中にある陽子の個数を表しています。つまり鉄の原子は、26個の陽子と26個の電子があるということです。仮に陽子の数が一つでも異なればそれは鉄原子ではありません。陽子の数が一つ減れば原子番号25のマンガン、一つ増えれば原子番号27のコバルトに変わります。
このように原子とはその原子核の中にある陽子の個数でどの性質を有する元素なのか決まるということです。
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素粒子について解説!
素粒子とは、物質を構成する最小の単位を意味します。基本的にはそれ以上分割できない粒子と同じ意味になるので、基本粒子とほぼ同義語になります。
原子の項目でも解説しましたが、原子と言うのは電子・陽子・中性子の3つの粒子で構成されるので最小単位ではないということがわかりました。
では本当の意味で物質を構成する最小単位とは何になるのか?その答えとして登場した概念が、素粒子というものです。ただしこの素粒子にも実はいろいろな種類があります。
これ以上の内容となりますと『素粒子物理学』でかなり難しい内容になりますが、大雑把に言えば素粒子にはフェルミ粒子とボース粒子の2種類あるということだけ覚えておいてください。
特に有名な素粒子としてはニュートリノがありますね。
ニュートリノは東京大学の小柴昌俊教授がノーベル物理学賞を受賞したことで有名になりましたが、これは1987年に大マゼラン星雲で起きた超新星爆発で発生した自然のニュートリノを初めて観測したことの偉業を称えたものです。
素粒子と言うのは物質の最小単位でありますが、原子よりも小さいため簡単にすり抜けてしまいます。先ほども説明しましたが原子と言うのは原子核と電子によって構成されていますが、この原子核と電子との間は例えるなら地球の周りを月が回るのと同じ感じで凄く隙間が空いています。
もちろん目に見えない超ミクロな世界なので、隙間があるとしても我々人間には実感することはできません。しかし素粒子というのは原子よりもはるかに小さい粒子なのでこの隙間ですらいとも簡単に通過できてしまうのです。
簡単に物質を通過できてしまうので観測することがいかに難しいかがわかると思います。
もう一つ有名な素粒子にヒッグス粒子があります。
ヒッグス粒子とは1964年にピーター・ヒッグスによって提唱された素粒子で、物質になぜ質量があるのかを解説するために提唱された素粒子のことです。
宇宙は137億年前のビッグバンによって誕生したとされていますが、誕生当初は質量がなかったため全ての粒子は自由に飛び回っていました。しかし徐々にヒッグス粒子が宇宙空間全体を満たすようになったことで、他の粒子が動きにくくなって衝突しあい、様々な物質を構成していったという考えが広まるようになっていきます。
この動きにくさこそがまさに質量そのものになるわけです。これが無ければ物質は構成されない、すなわち星や生命も誕生しない、まさに神の粒子と言うわけです。
近年まではあくまで理論上の存在でしたが、スイスのジュネーブ郊外にある大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の実験で2013年3月にその存在が証明されました。
ヒッグス粒子は素粒子の標準模型に含まれる17粒子の中で最後まで未発見だったので、これにて素粒子物理学は重要なターニングポイントを迎えたことになります!
まとめ
原子と素粒子の違いを最後に簡単にまとめておきます。
- 素粒子は物質を構成する最小単位であるが、原子はその元素の性質を失わない範囲での最小単位
- 原子は原子核の陽子の数によって性質の異なる元素となる
- 電子やニュートリノ、ヒッグス粒子などが素粒子
このように原子と素粒子とは似て非なるものだとわかります。学校の授業はわかりやすく説明しているのでやや誤解を招いていると言えますが、あくまで物質を構成する最小単位は素粒子だということは頭に入れておきましょう!
最後になりますが改めて図で解説すると以下のようになります、参考になりましたら幸いです!
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