日本の国民的スポーツと言えばご存知野球ですね。
ただ野球のルールと言いますと、みなさんどれだけ完璧に把握しているでしょうか?
日本は昔から野球大国として栄えてきたので、幼い頃からも野球に触れる機会が多く、知らない人の方が少ないと思います。
ただ最近ではワールドカップの影響でサッカーの人気の方が高くなって来たようですが、それでも高校野球の人気の高さや、WBCワールドベースボールクラシックでは日本は2大会連続で優勝しています。
そんな野球のルールの中で、面白く特徴的なのが故意四球、いわゆる敬遠という制度です。これは守備側が打者をわざと1塁に歩かせるという戦法ですが、キャッチャーが立ち上がって明らかなボール球を4球投げることで記録がつきます。
しかしメジャーリーグでこの故意四球を申告制にするべきという声が挙がっています、一体なぜなんでしょうか?
今回はその理由と故意四球のルールについて改めて解説していきます!
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敬遠のルールについて解説!
故意四球(通称敬遠)とはその名の通り、投手が意図的に打者に対して故意に四球を与えることを言います。
野球のルールをもう一度だけおさらいしておくと、得点が入るのは打者がヒットorホームランなどで3つの塁を回って本塁に帰還した時です。
打者1人だけで本塁に帰還するのはホームランになった時で、自動的に1点以上入ります。
そのため故意に四球を与えて打者を塁に出すのは本来デメリットでしかありません。
しかし時と場合によっては打者を歩かせた方が守備側にとって有利になるケースも出てくるのです、それについてまず打者が出塁するための条件から順に解説していきます。
打者が出塁するための条件とは?
一般的にはファースト・セカンド・サードの3つの塁を埋めてヒットorホームランで出塁したランナーを本塁に帰還させれば、一気に2~4点入るので攻撃側にとってはチャンスです。
打者が塁に出るのは
- ヒットを打った時
- 守備側がエラーした時
- 四球を出した時
- 打者に投手の球が当たった時
- 振り逃げダッシュの時
- 打者の走塁を守備側が妨害した時
の主に6つのケースに分けられます。
といってもこの内打者が出塁するのは、ヒットを打った時かエラーした時か四死球を記録した時がほとんどです。
故意四球とは結果的には普通の四球と変わらないので、打者を出塁させることになります。
つまり次の打者が長打を打った時に失点する確率とホームランが出た時に失点する量が増えるので守備側にとってはデメリットでしかなさそうに思えます。
故意四球と通常の四球との違いは?
故意四球は通常の四球と違ってキャッチャーが立ち上がって投手が明らかにボールと判定される球を投げる必要があります。
しかしごく稀にですが、明らかなボール球でも打者がヒットにする事例があったようで、そうならないために打者から十分に離れた場所に投球する必要があります。
ただしキャッチャーは必ずしも立つ必要はなく、打者がバットを振ってストライクが取れる可能性もあるので、座ったままでもボール球を4連続で投げることがあります。
その場合は、故意四球と記録されることはなく敬遠気味の四球と呼ばれますが、記録上は通常の四球扱いになります。
故意に四球を出すのは何故?
ではなぜ故意四球を選択する必要が出てくるのでしょうか?
先ほども説明した通り、守備側にとっては打者を塁に歩かせるというのは、失点の確率、及びホームランが出たときの失点の量も増えるのでリスクばっかりです。
しかしそれはあくまで攻める側の視点の話であって、守備側の視点に立つと状況は違います。
一般に守備側が故意四球を出すケースと言うのは、そうした方が試合を有利に進められると判断した時です。
どういうことかと言いますと、守備側は当然打者をアウトにして失点を最小にする試合運びをしなければいけないわけですが、実は打者が塁に多くいた方がアウトを取りやすいとも言えるのです。
例えば9回の裏2アウトという状況で、1点差勝利で迎えたとき、後打者1人をアウトにすれば勝ちですが、この時3塁と2塁にランナーがいたと仮定します。
こうなりますと打者が長打を打った時に2人のランナーが帰ってきて2点が入り、それでサヨナラ負けとなってしまいます。
実はこれこそがまさに故意四球をするべきケースと言えるのです。
1塁にわざと打者を歩かせて、次の打者と勝負するという選択をします。
こうすれば守備側にとっては、打者が打ってゴロになった球をどこの塁でもアウトにできます。
これがフォースアウトと呼ばれる制度です。
ランナーというのは打球がフライ以外でゴロになった時には進塁義務が発生しますが、その進塁義務を逆手に取った戦略ともいえます。
このように考えれば、1塁・2塁・3塁・本塁とアウトにできる塁が増えて、守備側にとってみれば有利になると考えられます。
俗にいう”満塁策”もこの考えに乗っ取って編み出された戦法です。
またバッターが強打者の時も故意四球を出すことがあります。
一般に打率・打点・本塁打というのが、バッターの成績の中で大事な指標ですが、これらの記録が高い方が強打者とみなされます。
こういったバッターと対戦すると長打・本塁打を打たれて失点する確率が高いのです。
上に挙げたシチュエーションと合わせて考えますと、9回の裏2アウトで3塁・2塁に走者がいた時に、打撃成績が極端に高い選手と対戦すると長打を打たれて失点する確率が高いと言えます。
守る側の視点で考えれば、こういった強打者との対戦は避けて次のバッターと対戦した方がお得なのです。
投手にとってみれば屈辱かもしれませんが、チームプレイを優先し試合に勝つという点では故意四球も止むを得ないと言えるでしょう。
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敬遠にまつわる有名なエピソード
故意四球は先ほども説明した通り野球の戦略上、守備側に認められた特権ともいえます。攻撃する側にとっては、より多くの得点を稼ぎやすくなるチャンスと言えますが、それはサヨナラのチャンス以外の時です。
あと2点とれば勝ちという時に、3、4点取る必要はありません、同点なら1点でもとれば勝ちなのです。
逆に守備側の目線で考えれば1失点も許されないことになるので、そういった場面で故意四球を選択するのがほとんどです。シーズン終盤の優勝がかかった試合ならなおさらです。
ただしあまりこの故意四球を連発し過ぎると観客からブーイングが起きることもしばしばあります。
また打者にとってみても、ヒットやホームランを打とうと決意して打席に立ったのに、敬遠されたら腹が立つ選手も多いのです。
例えば1968年5月11日に長嶋茂雄さんが抗議の意図でバットを持たずに打席に入ったり、2003年9月20日の西部対近鉄の試合では、西部のカブレラ選手が本来と逆の左打席に入ったこともあります。
そして敬遠四球で最も印象的な出来事と言えば、1992年の甲子園での松井秀喜さんへの5打席連続敬遠です。
この試合で対戦した明徳技術高校の投手が松井秀喜さんに対して5打席連続で四球して敬遠したことは、高校野球史上最大の事件として語り継がれています。
(ただし記録上はキャッチャーが立ってないので”四球”扱いです。)
当時の明徳技術高校の監督は、「1人だけプロの選手がいた。」と語っていて改めて松井秀喜さんの凄さを実感したわけでありましたが、あまりにもフェアプレーに反しているとして、試合中のみならず試合後もブーイングが絶えなかったそうです。
さらにも野球関係者以外の多方面の専門家も問題視して社会問題にもなりました。
敬遠の申告制の狙いは?
ここまで故意四球にまつわる戦略上の必要性や様々なエピソードを交えて紹介しましたが、その故意四球がもしかしたら廃止されるかもしれないニュースが飛び込んできました。
スポーツ専門局ESPNが報じましたが、大リーグ機構が故意四球とストライクゾーンに関するルール変更を選手会に通告したようです。
審判に意思表示すれば、ボールを投げなくても打者を自動的に1塁へ歩かせることができるようになりますが、この申告制を導入すれば試合時間を約1分短縮できるそうです。
これまでは1度の敬遠で、最低でも4球は投げなければいけなかったのですが
「どうせ1塁を埋めるんだったらわざわざ球を投げる必要はなく、最初から歩かせてもいいんじゃないの?」
というのが導入の理由です。
確かに試合時間は短縮できると思いますが、それ以外のメリットは投手の球をキャッチャーが後逸する危険がなくなるということと、故意四球が打てなくなるということです。
長嶋茂雄さんや新庄剛さんのように、故意四球をヒットにした選手は少なからずいるのでその危険性はなくなるのは大きいです。
もちろんそんな事態は滅多に起きることではありません。ましてや故意四球自体が1シーズンに何度もあることではないので、そこまで急を要するほど必要な制度なのかと疑問に感じます。
果たしてこの申告制は導入されるのでしょうか?
NPBでは早ければ2018年のシーズンに導入される見込みですが、故意四球に関しては様々なエピソードやドラマがあってむしろそれが野球の醍醐味の一つだと考えるファンも多いことから導入に反対の意見も多いです。
原則論で考えればバッターが出塁できるのは、ヒットを打った時と四死球、振り逃げなどに限られます。
バッターボックスに立つことなく申告されただけでバッターが自動的に1塁に行くというのは凄く拍子抜けして、余計にブーイングが増しそうな感じがしますね。
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