高気圧と低気圧
この2つの言葉は天気予報を聞けば毎日のように耳にしますね。
しかし当たり前のように浸透しているこれらの言葉、改めてその定義の違いについて詳しくご存知でしょうか?
単純に気圧が高い空気の塊が高気圧で低い空気の塊が低気圧じゃないの?
でもそれだと一体何が基準で気圧の高い低いが決まるの?
文字通り高い気圧を持った空気の塊と低い気圧を持った空気の塊と言うイメージは抱けると思いますが、そもそも何が基準となっているかは正直あやふやですね。
またそれぞれの風の向きや天気の状態も変わってくるかもしれません。
ということで今回は高気圧と低気圧の2つの違いを、図を用いて詳しく見ていきましょう!
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高気圧と低気圧の違い!
それでは改めて高気圧と低気圧の定義の違いですが、一言でまとめますと以下のようになります。
- 高気圧とは、周囲より気圧が高く、時計回りに風が吹き出す場所で、天気が良い
- 低気圧とは、周囲より気圧が低く、反時計回りに風が吹き込む場所で、天気が悪い
ここで注意してほしいのは、高気圧と低気圧が何を基準に気圧の高低が決まるかです。
地球を取り巻く大気圧との差で決まるわけではなく、あくまで周囲との気圧差で高いか低いかが決まります。
大気圧の大きさがだいたい1,013hPa、つまりこれより低い気圧でも高気圧となることもあります。
※気圧の単位hPa(ヘクトパスカル)については、以下の記事で詳しく述べています。
圧力の単位として用いられているのはパスカルであることは学校の理科の授業でも習いますね。だけど天気予報でよく聞くのはヘクトパスカルです。2つの定義の違いは何なのか。キロパスカルが使われない理由と合わせて解説していきます。
また高気圧と低気圧でポイントとなるのは、風の向きと天気の良し悪しです。
高気圧ならその中心から風が周囲に時計回りに吹き出していて、総じて天気が良くなります。
対して低気圧ならその逆で中心に風が反時計回りに吹き込んでいて、天気が悪くなります。
確かに天気予報で日本列島が高気圧に覆われると、晴れマークが多くなるね。
逆に低気圧だと雲が多くなって、雨マークや曇りマークが多くなるね。
一体どうしてこのような違いになるのでしょうか。
気圧の高い低いで風の向きや雲が発生具合はどう変わるのでしょうか、次の章からより詳しく見てみましょう!
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高気圧と低気圧の仕組み
高気圧と低気圧は、空気の2つの循環によってそれぞれ登場します。
その2つの循環とは、下降気流と上昇気流です。
上の画像のように空気が下に流れる下降気流では高気圧となり、上に流れる上昇気流では低気圧となります。
下降気流と上昇気流がそれぞれどういった原因で起こるのかはよくわからない部分も多いのですが、基本的にはこの2つの気流で高気圧と低気圧に分かれると思ってもらっていいです。
下降気流が起こる場所では、空気が文字通り地表に向かって送り込まれます。
これにより周りの空気と比べて気圧が上がります。
さらに空気を地表に向かって送ることで、上空にあった雲を消す効果もありますから、晴れの天気となりやすいのです。
一方で上昇気流が起こる場所では、空気が上空に向かっていきます。
これにより周りの空気と比べて気圧が下がります。
さらに周りから空気を取り込むということはそれだけ水蒸気も多く入ってきますので、雲が多くなり、曇りや雨となりやすいのです。
因みに上昇気流で空に上がった空気は今度は高気圧に向かっていき、下降気流となって、また地上に下りていきます。
要するに空気は地上と上空を循環するわけです。
ここで一つ空気の流れを滑り台に例えて解説します。
上の画像のように滑り台の上に大きな鉄球を持って行き、手を放します。
すると鉄球は滑り台を転がっていき、下に移動します。
至極当然の現象だと思いますが、これと同じことが高気圧と低気圧でも起きているのです。
風の移動と言うのは、言ってみれば空気の塊が移動しているのと同じこと。
空気の塊(気団)を鉄球に例えたら、滑り台の上が高気圧の中心、滑り台の下が低気圧の中心です。
気圧の高い場所から低い場所へ移動する、まさに鉄球が滑り台を転がり落ちる構図と似ていますね。
風の向きにも注意しよう!
さて風については気圧の高い場所から気圧の低い場所へ向かって吹くと説明しました。
これは逆に言えば高気圧を中心に外側に風が出ていき、低気圧に向かって流れ込むという見方もできます。
このようになりますが、ここで注意すべきは高気圧と低気圧の風の向きの違いです。
おさらいしますが、高気圧では時計回りに風が吹き出し、低気圧では反時計回りに風が吹き込みます。
どうしてこのような違いが生じるのか説明しましょう!
まず高気圧については下降気流が起きて、上空にあった空気の塊を周囲に吹き出します。
この時普通に考えたら、高気圧の中心から周囲の方向に真っすぐ進むように見えます。
しかし現実的にこのように綺麗な方角になりません。
実際はコリオリの力と言う、地球の自転の影響で生じる力で右方向に曲げられ、だんだん渦を巻き始めます。
コリオリの力という難しい言葉が出てきましたが、要するに簡単に説明しますと
- 北から南へ移動する風には、西(左)側に力が働く
- 南から北へ移動する風には、東(右)側に力が働く
となります。
高気圧は南に出て行った風は左方向に曲げられ、北に出て行った風は右方向に曲げられます。
その結果、高気圧を中心に風が時計回りに吹き出す形となるわけです。
一方低気圧では、中心に向かって風が吹き込む形となるので、高気圧とは逆となります。
つまり南から吹き込む風は右方向に曲げられ、北から吹き込む風は左方向に曲げられます。
その結果、低気圧を中心に風が反時計回りに吹き込む形となるわけです。
※コリオリの力を使って、地球の自転を証明した意外な方法については以下の記事をどうぞ!
地球の自転を実験的に証明したフーコーの振り子の原理についてわかりやすく解説します。なぜフーコーの振り子が自転を証明しているのか?コリオリの力との関係や回転するのに要する時間についても合わせて解説します!
冬型の気圧配置の例
上の画像は、冬の日本列島で良くみられる気圧配置を図に表したものです。
日本列島の北西にシベリア高気圧、東側に低気圧がありますが、これが俗に言う西高東低の気圧配置です。
風の向きは高気圧から低気圧へ向かうので、この気圧配置の場合風は北西から東、あるいは南東に向かって吹く形になります。
初冬に吹く木枯らし一号がこれに該当する風だね。
冬に押し寄せる強い寒気の正体がこれで、日本海側で大雪をもたらすのも、大陸からの風が日本海を渡る際に水蒸気を蓄えて吹き込むから起きます。
等圧線を見てみよう!
高気圧と低気圧のお話しで、欠かせないのが天気予報図でも登場する等圧線です。
もう一度上の西高東低の図をご覧ください。
等圧線とは同じ気圧となる地点を結んだ線のことで、通常1000hPaを基準に20hPaごとに太い実線、4hPaごとに細い実線を書きます。
上の西高東低の図では、西側にシベリア高気圧、東側に低気圧があって、それぞれの中心の気圧の数値は
- 高気圧は1024hPa
- 低気圧は966hPa
となります。
因みに高気圧は上の画像のように、やや広い間隔で等圧線は並びますが、低気圧は狭い間隔で等圧線が並ぶのが特徴です。
熱帯低気圧である台風の等圧線は、中心気圧が950hPaなどになって等圧線がびっしり並ぶよ。
主な高気圧と低気圧の例
最後に高気圧と低気圧の代表例を紹介しましょう。
高気圧の代表例は、
- シベリア高気圧
- 太平洋高気圧
- 移動性高気圧
低気圧の代表例は、
- 温帯低気圧
- 熱帯低気圧
- 爆弾低気圧
などがあります。それぞれ順番に紹介していきましょう!
シベリア高気圧、太平洋高気圧、移動性高気圧
まずシベリア高気圧については、先ほども解説したように冬の日本列島を襲う寒気団の正体です。
そして夏にかけて日本を覆うのが言わずと知れた、太平洋高気圧。
7~9月にかけてすっぽり覆う太平洋高気圧は、長期にわたってその場に留まり、うだるような暑さをもたらします。
暑いだけでなく海の上にもある高気圧のため、太平洋上の湿った空気を日本に運び、蒸し暑さとともに雷雨を発生させる原因ともなっています。
因みに太平洋高気圧と違って、移動する高気圧もあり、日本では春と秋に良く訪れます。
文字通り移動性高気圧と言うのですが、これは中国の揚子江気団と言う暖かく乾燥した空気を運びます。
空気自体が暖かく乾燥しているので、春と秋は温暖で過ごしやすくなるわけです。
温帯低気圧、熱帯低気圧、爆弾低気圧
温帯低気圧は日本やヨーロッパなど中緯度地域に良く発生するタイプの低気圧です。
温帯地方で発生しやすいから温帯低気圧と呼びます。
特徴としては、冷たい空気と暖かい空気がぶつかりやすいので、その境目で温暖前線と寒冷前線が発生することです。
両方とも雨をもたらす前線ですが
- 温暖前線が温帯低気圧の南東側に発生しやすく、シトシトとした柔らかい雨をもたらす
- 寒冷前線が温帯低気圧の南西側に発生しやすく、激しい雷雨をもたらす
といった違いがあります。
続いて熱帯低気圧についてですが、こちらは熱帯地方に発生する低気圧で、強い風と雨を伴った渦巻き状の雲の塊です。
通常台風と呼ばれることが多いですが、台風とは熱帯低気圧の中で「最大風速が秒速17m以上に発達したもの」という定義があります。
熱帯低気圧という分類ですが、温帯である日本にも夏から秋にかけてよく訪れます。
ただし夏の真っ盛りの時期は、太平洋高気圧にその進路を阻まれて北上しにくく、太平洋高気圧が後退する初秋頃に最も日本列島に接近しやすくなります。
毎年日本に多く訪れる台風ですが、改めてその発生・接近・上陸数が一年で最も多い時期はいつでしょうか?発生数と接近数と上陸数の多い3か月を紹介するとともに、どうしてその時期に台風が来やすくなるのか図解で解説します!
※台風の発生する仕組み、エネルギー源については詳しくは以下の記事でまとめています。
毎年日本には多くの台風が上陸し大きな被害をもたらします。しかしなぜ台風ってあれほどの風速を誇るのでしょうか。台風を生み出す熱のエネルギー源を詳しく紹介していきます。調べてみると、とても身近な物理現象と大きく関係していました。
最後に紹介するのは爆弾低気圧です。
こちらは冬の天気予報でたまに耳にする程度だと思いますが、冬の嵐としても有名で、日本海側と北日本に猛吹雪をもたらします。
冷たく乾燥した大陸性の気団と、暖かく湿った海上の空気が衝突する大陸の東岸で急速に発達するのが特徴で、その場所に該当するのが日本海や三陸沖、千島列島あたりになります。
冬の時期は台風は無縁と思いがちですが、南の海上ではなく北の海上に注意を向けないといけません。
改めてみると、日本は夏も冬も低気圧の影響を受けやすい場所にあるんですね。
まとめ
今回は高気圧と低気圧のいろんな違いを解説してきました。それでは今回の内容を振り返りましょう!
- 高気圧と低気圧は周囲より気圧が高いか低いかで決まり、大気圧1013hPaが基準ではない
- 高気圧は晴天になりやすい気圧配置、風が時計回りに吹き出す
- 低気圧は曇りや雨になりやすい気圧配置、風が反時計回りに吹き込む
- 風は高気圧から低気圧へ向かって吹く、西高東低の冬型の気圧配置が代表例
- 高気圧はシベリア高気圧、太平洋高気圧、移動性高気圧などがある
- 低気圧は温帯低気圧、熱帯低気圧、爆弾低気圧などがある
気圧が高いか低いかだけの違いでしたが、たったこれだけの違いで風の向きや天気の良し悪しも違ってくるのは意外でした。
高気圧と低気圧の違いがハッキリわかれば、今後の天気予報も凄く頭に入りやすくなりそうですね。
少なくとも自分の住んでいる地域がどっちに近いのか、また低気圧と高気圧どっちが先に訪れるかがわかれば、仕事帰りの天気の予想も自分なりにつくかもしれませんよ。
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