我々人間は日常生活で、当たり前のようにいろいろな音を耳にしますね。
しかし音というのは、物理的には波の一種です。
ある地点で音が発生したと仮定すると、そこから音の波が発生し、人間の耳に届くことで音が聞こえることになります。
この音が伝わる速さのことを、「音速」と呼ぶのですが、時速や秒速で換算した時の速さがいくらになるかご存知ですか?
どのくらいだっけ?学校で習った気もするけど、ハッキリした数字は覚えてないな。
そういえば光速についても習ったけど、音速と比較するとどれだけ違うんだろう?
実は音というのはかなり速いのですが、それよりも速く移動する物体もあることがわかりました。
さらに興味深いのは、温度や伝わる物質の状態でも大きく変化するという点です。
それではマッハの世界について詳しく見ていくことにしましょう!
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音速を時速・分速・秒速で!
改めて音速について簡単に解説しますと、空間や物質中を伝わる音の速さで、英語では「speed of sound」と表します。
ではその音速が時速や秒速で計算すると、どのくらいの数値になるのでしょうか?また合わせて分速でも表現しますよ。
- 音速=時速に換算すると、約1,225km/h
- 音速=秒速に換算すると、約340m/s
- 音速=分速に換算すると、約20km/m
※標準大気圧で、温度が15℃の乾燥した空気を伝わる場合
- 1時間=60分=3,600秒
- 1分=60秒
- 1km=1,000m
となるので、時速と秒速と分速の相互変換はそれぞれ
- 時速(km/h)=60×分速(km/m)
- 分速(km/m)=0.06×秒速(m/s)
- 時速(km/h)=60×60×秒速(km/s)=3.6×秒速(m/s)
となります。
ここで注目してほしいのが、注釈として「標準大気圧で温度が15℃」と書かれていることです。
実は音速というのは、気温によっても大きく変動する事実があります。
それについては記事の後半で触れることにして、まずは音速というのはどれくらい大きな速度なのか紹介していきましょう!
音速を様々な速さと比較!
音速についての具体的な数値を、時速と分速と秒速で計算しましたが、いかがでしょう?
一番わかりやすいのが時速で表現した時ですね。1時間に1,225km進むスピードと表現できます。
かなり大きな数字ですが、いろいろな高速な物体や動物と比較してみることにします。
- 自動車:平均速度が約50km/hなので、約24倍速い
- チーター:平均速度が約100km/hなので、約12倍速い
- 大型台風の風速:平均速度が約200km/hなので、約6倍速い
- 新幹線:平均速度が300km/hなので、約4倍速い
- ハヤブサ:最高速度が約390km/hなので、約3倍速い
- 飛行機:平均速度が800km/hなので、約1.5倍速い
こうしてみると音速がいかに凄いスピードか実感できます。
動物で最速を誇るハヤブサよりも圧倒的に速いんですね。
ただ地球の一周は4万kmもあるので、地球一周を移動するのに、だいたい37時間ほどかかる計算です。
また東京からハワイまでの距離も6,500kmもあるので、だいたい5時間かかります。
地球全体で考えると、そこまで速いとも言えないですね(*_*)
音速は数値が大きくてなかなか実感しにくい数字ですが、上の比較を見てもらえれば、
だいたい飛行機より少し速いスピード
という表現もできますよ。
音より速い乗り物もある?
ところが世界は広いもので、実は音よりも速く移動する物体があるんですね。
いくつかの例を表で紹介していきます。
時速(km/h) | |
---|---|
戦闘機 | 2,000~3,000 |
地球の自転 | 1,700 |
人工衛星 | 27,000 |
特に驚くべき点は地球の自転速度です。
ご覧の通り時速1,700kmもあって、音よりも速かったのです!
これだけ速く回転する星の上に当たり前のように生活していたなんて、今更ながら驚愕な事実でしょう。
ただ人工物でも音より速く移動できる物があるのです。
戦闘機と人工衛星などは、音よりも速く移動できる超高速な物体として有名です。
特に戦闘機は最高で3000km/h以上に到達する機体もあるそうです。
地球の上空を周回する人工衛星に至っては、音速の20倍近くのスピードです。
地上の乗り物とは次元が違いますね!
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音速は温度でも変わる?
さてここまでは音速を時速や秒速で表した時の、大きさについて語ってきました。
だけど最初の章で触れたように、音速というのは気温によっても変動するのです。
これについては細かい原理については省いて、敢えて簡単に解説することにします。
まず最初の章で紹介した、「温度が15℃の乾燥した空気」での音速は秒速340m/sです。
この数字がどういった式から求められるのかといいますと、温度tを変数とした数式で求められます。
このような式になるのですが、数学で言うところの一次関数の計算式になっていますね。
そのため横軸をt(℃)、縦軸をV(m/s)としたグラフでも表現できます。
「温度が上がれば音速も上がって、温度が下がれば音速も下がる」というのがこれにてよくわかります。
では各温度毎にどういった数値になるのか、より詳しく見ていきましょう。
見てもらえればわかりますが、温度が10℃違うだけで6m/sの差があります。
またちょうど気温が氷点下の時に、時速1,192kmとなっていますね。
これは一昔前だと鎌倉幕府の年号の覚え方として有名でした。(今は1185年だそうですが)
そのため気温0℃の時の音速は、ちょうど元号が令和になっているので、
「令和になっても 1192(いい国)で 自給自足(時速)」
という覚え方がしっくり来るでしょう!
寒い朝で遠くの音が聞こえてくるのは?
そういえば寒い朝に遠くの音がよく聞こえることがあるけど、もしかして音速が温度で変わることが関係しているの?
ハイ、ズバリその通りです。
上にも書いたように、音速は温度が上がるほど上がって、温度が下がるほど下がる性質があります。
寒い日の朝は放射冷却現象と言って、地上の空気が急激に冷やされ、上空の温度よりも下がってしまいます。
つまり上空に行けば行くほど温度が高くなる逆転現象が起きるのです。
この逆転現象によって、普段は障害物などによって遮られるはずの遠くの物音が、聞こえるようになるということです。
※もっと詳しく解説しますと、屈折の法則も絡んでくるのですが、長くなるので省略させていただきます。
気体の分子量でも変わる?
これまで説明した音速は、普通の空気を伝わる時の場合を説明しましたが、実は気体の種類によっても速度は変わります。
代表的な例が、パーティーグッズなどで使用されるヘリウムガスですね。
ヘリウムガスを吸って声が変わる通称「ドナルドダッグボイス」という現象は、音速が変化することによって起きるのです!
簡単に言えば、ヘリウムを吸ったことで発する声の周波数が高くなることで起きます。
通常の空気の平均分子量が29となっていますが、ヘリウムの分子量は4と相当軽く、ヘリウム中では音速は960m/sもあるのです。
人の声も立派な音波ですから、通常の波と同じように周波数があります。
詳しい計算などは下の記事で解説していますので、興味がある方はどうぞ!
パーティーなどでよく遊び道具としても用いられるヘリウムガスですが、なぜ声が高くなるのでしょうか?その理由を高校物理でも学んだ音の振動数・速さ・波長で解説していきます!
固体中や液体中だと速さが変わる!
音速についてはさらに興味深い事実もあります。
これまで紹介したのは、普通の空気を伝わる上での話でしたが、音というのは空気のみならず水の中や固体の中も伝わるのです。
ちょっと意外かもしれません。
ただここで気を付けておいて欲しいのが、実は液体や固体の中を伝わる音速は空気中よりも速くなるのです!
簡単に言いますと、固体>液体>気体の順で速くなります。
どうしてこうなるのかについて詳しい説明は省きますが、やはりこれもヘリウムガスと同様で音の周波数が変わるからですね。
- 水を伝わる音は1,500m/s
- エタノールを伝わる音は1,207m/s
- 氷を伝わる音は3,230m/s
- 鉄を伝わる音は5,950m/s
- 鉛を伝わる音は1,960m/s
となっており、固体中では凄まじい速さになります!
お風呂の中で音楽を聴くと、かなり変な音に聞こえるのかな。
例えば糸電話などは、まさに「糸」という固体を音が伝わっている代表的な例です。
ナイロン製の水糸を使ったとすると、音速はおよそ1000m/sとなっています。
やはり空気中よりも速いのですが、このことが糸電話で声が聞こえやすい原理となっているわけです。
また壁越しにコップを当てると隣の部屋の音や声がよく聞こえることもありますが、やはりこれも同様な理由です。
さらに普段自分が発生する音は骨伝導によって伝わるのに対し、録音した自分の声は空気中を伝わって耳に届きます。
なるほど、だから録音した声が全然違った声で聞こえるんだね!
音速を「マッハ」で表現する!
実は物理の世界では、音速は極めて重要な速度と認識されていて、「マッハ」という表現をされます。
例えば人工衛星や戦闘機、大気圏を突入する際のロケットの速度だと、音速を超えるスピードにも達します。
音速よりも数倍の規模を表すことを強調するために、「マッハ〇」という表現をよく用いるわけです。
別の言い方をすれば、ある物体の速度と気温15度の時の音速(1,225km/h)との比となります。
「マッハ(mach)」は「音速」を意味する英語ですが、この後に数字を入れて「音速の〇倍」と表現します。
- マッハ0.5=音速の0.5倍(半分)の速さ
- マッハ5=音速の5倍の速さ
現時点ではマッハ数が3を誇る第3世代ジェット戦闘機が、史上最速の戦闘機となっています。
ただこれ以上のマッハ数となると、今度は「ソニックブーム(sonic boom)」という衝撃波が生じて、速度が上がらなくなるとされています。これが「音速の壁」と呼ばれる現象です。
「ソニックブーム」といえば、ストリートファイターのガイルの技でも有名だよね!
超音速の旅客機があった?
マッハ3とか4といった乗り物が実用化されれば、それこそ世界一周旅行も20時間程度になりますし、ハワイまでも2時間程度と短縮できます。
しかし音速を超える乗り物というのは正直実現がほぼ困難なのが現状です。
かつて運航していた超音速旅客機としてコンコルドがあります、年配の方ならよく知っているでしょう。
コンコルドはマッハ2で移動する史上最速の航空機として名を馳せました。
1976年から2003年まで、アメリカとヨーロッパの間を3時間程度で移動していたのですが、超音速を実現するには大量の燃費が必要だったために、運賃が通常の飛行機の倍以上にも膨らみました。
またそれに合わせて上で紹介した衝撃波の抵抗の問題で燃費が悪くなるなど、技術的な問題が重なって普及しませんでした。
その技術的な課題が克服されない中、ついには2000年に墜落事故を起こしてしまい、2003年に全機が撤退しました。
このように悲しい過去や技術的な課題を引きずっており、10数年近く経っても旅客機の速度はなかなか上がらないのが現状です。
光速と比較!
音速と並んで物理の世界で重要な速度とされているのが光速、光の速さです。
光速については以前にも当ブログで取り上げていますが、とにかく速すぎるのがその特徴です。2つを比較しますと、
- 音速は時速1,225km
- 光速は時速1,080,000,000km
となります。
だいたい音速が1200km/h、光速が10.8億km/hなので、光速は音速の90万倍速いことになります。
音も十分速いのですが、光はそれ以上に速いのです!(因みに光も音と同じで波の性質があり、液体中で速さが変わりますよ。)
この世で最も速いと言われるのが光ですが、その速度を時速・秒速で換算するといくらになるのでしょうか?様々な物体の速さと比較しつつ、光速度でも遅く感じる場面や媒質によって光の速さが異なる現象についても詳しく見ていきます!
落雷でわかる音速と光速の差とは?
実は日常生活でも、音と光の速さの差を実感できることがあります。
それが雷ですね。
雷は大雨が降る際や、積乱雲などが発生した時などによく起きます。
遠くの空を眺めると、ビカビカと光る光景を目にした人は多いでしょうが、雷が落ちた時に「ゴロゴロゴロ」とか「ドーン」という音も聞きますね。
だけどピカッと光ったと同時に音が聞こえるかと言われればそうではなく、何秒かした後に音が聞こえることが多いです。
これこそまさに、光と音の速さの差が原因で起きているわけです!
つまり音と光の時間差が大きいということは、それだけ雷との距離が離れているということなんだね。
まとめ
今回は音速について詳しくまとめました。それではまとめといきましょう!
- 音速は時速で1,225km/h、秒速で340m/s、分速で20km/mで計算される
- 音速は温度によって一次関数的に変化する
- 気体の分子量でも音速は変わり、ヘリウムガスだと約3倍
- 液体や固体を伝わる音は気体よりも遥かに速い
- マッハとは、音速の何倍速いかを表す物理量
- 光速は音速の約90万倍速い
新幹線よりも何倍も速いのが音なのですが、光と比べると全然遅いですし、音よりも速い乗り物や物体があります。
こう考えると音速というのは、少し地味に思われるかもしれません。
それでも技術的には音速を超えるというのは一つの壁であります。
これまで様々な技術革新を起こしてきた人類ですが、宇宙船の光速の壁と並んで、音速の壁も大きく立ち塞がっています。
日本でそろそろリニアモーターカーが実用化されようとしていますから、空の移動の革命ももう一度起きてほしいものですね。
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