古代イスラエル王国があったとされるパレスチナ南部、そこは「ユダヤ」と呼ばれています。

ユダヤ人、ユダヤ教など現在でも「ユダヤ」という言葉はよく聞きますが、漢字でどう書くかご存知ですか?


そして「ユダヤ」と言えば、切っても切り離せないのがキリスト教との関係です。

実はキリスト教の教典である聖書は、なんと「ユダヤ教」とも関係していたんです!


またこの聖書には旧約聖書新約聖書の2種類あるわけですが、

この2つって同じ聖書なんですが、“旧約”と“新約”と分けられていて、その内容の違いを詳しくご存じの方はどれだけいるでしょうか?


調べてみたら大きく誤解していた部分もあったようです。

今回は「ユダヤ」の漢字表記、さらにユダヤ教徒とも関係がある旧約聖書と新約聖書の違いをわかりやすく解説していきます。一緒に疑問を払拭しましょう!




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「ユダヤ」を漢字で書くと?

それでは正解の発表です。「ユダヤ」を漢字で書くとこうなります。

猶太



この2文字を見て、勘のいい人は察した思いますが、当て字となります。

  • 「猶」が音読みで「ユウ」
  • 「太」が音読みで「タ(ダ)」

2つを合わせて「ユウダ」となるので、「ユダヤ」と読めなくはないです。

しかし実はさらに調べてみたら、この表記の由来はどうも中国語にありました。

「ユダヤ」を中国語で書くと?

「ユダヤ」の中国語表記ですが、実は「犹太」と書きます。

発音は「ヨウタイ」となりますが、「犹太」を繁体字(香港や台湾、マカオで用いられる表記)で表すと「猶太」となり、日本語表記と同じになります。

つまり「猶太」は中国語由来の表記だったわけです。


※あの有名な物理学者アインシュタインもユダヤ人だったんです。その「アインシュタイン」の漢字表記について知りたい方は以下の記事をどうぞ!






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旧約聖書と新約聖書の違いって?

冒頭でも解説しましたが、キリスト教の教典といえば聖書ですね。

その聖書には主に旧約聖書と新約聖書の2種類があるのですが、どっちがどう違うのか、一言で簡単に解説しますと、

  • 旧約聖書は、ユダヤ教とキリスト教で使われる教典で、主にイスラエルの歴史と神話について書かれた書物
  • 新約聖書は、キリスト教のみで使われる教典で、イエス・キリストの生涯について書かれた書物

となります。


ここで注目すべきは、ユダヤ教も出てくることですね。

現在ユダヤ教徒が最も多くいる国はイスラエルですが、そのイスラエルの建国の歴史や神話が主に書かれているのが、旧約聖書となります。

ユダヤ人の父と言われるのがアブラハムと呼ばれる預言者なのですが、その子孫であるユダに与えられたユダ王国(後のユダヤ)があった地方が、イスラエルなのです。

そのためユダヤ教では必然的に旧約聖書が教典となるわけですが、ユダヤ教の場合旧約聖書だけしか使わないので、キリスト教と違って単に“聖書”と呼びます。

【ユダヤ教ではタナハと呼ぶ?】

またユダヤ教では旧約聖書を「タナハ」という変わった呼び方をしています。

旧約聖書を「律法5巻」と「預言者8巻」と「諸書11巻」の3つの部分に分けており、それぞれを「トーラー(Torah)」・「ネイビーム(Nevim)」・「カトビーム(Ketubim)」と呼んでいます。

この3つの言葉の頭文字T・N・Kに母音を付けた語として、「Tanakh」=「タナハ」となるわけです。


“約”は翻訳の“訳”とは違う!

恐らく一番誤解されやすいポイントが、“約”の意味ですね。

実はこの“約”は、「契約」や「約束」の“約”と同じで、決して翻訳の“訳”ではありません。

そのため「旧い内容だった聖書を、新しい内容に翻訳し直したのが新約聖書」ということではないので間違えないでください。


因みに約束とか契約という行為は、通常一人でするものではありませんね。

基本的には相手が必要なわけですが、ここで登場するのが「人間」と「神様」の両者です。

ノアやモーセなどは旧約聖書に登場する有名な人物ですが、彼らが唯一新ヤハウェとの間で交わした契約が、旧約聖書の最初の『創世記』において書かれています。

カトリックとプロテスタントも使っている!

またカトリックが使っている聖書が旧約聖書で、プロテスタントが使っているのが新約聖書というのも大きな誤解です。

学校の歴史の授業で習うと思いますが、ドイツの宗教改革でプロテスタントが誕生したのは有名ですね。


プロテスタントはカトリックと比べたら新興宗教ではありますが、だからと言って別に新しい方の聖書だけを使っているわけではありません。

プロテスタントもカトリックも旧約聖書と新約聖書の両方を使っているのは同じです。

しかし聖書の内容を研究する学者の視点や見解が、両方の宗派では異なっている部分もあります。
サタンとルシファーの違いって何?キリスト教の見解を詳しく解説!

旧約聖書について解説

旧約聖書の内容はイエス・キリストが生まれる前の出来事、主にイスラエルの神話や歴史に書かれています。

全39巻から成りますが、その内訳は

  • 律法(モーセ五書とも言う)が5巻
  • 創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記

  • 歴史書が12巻
  • 内容はイスラエルの繁栄と滅亡、ヨシュア記からエステル記まで

  • 誌歌書が5巻
  • ヨブ記、詩篇・聖詠、箴言、コヘレトの言葉、雅歌

  • 預言書が17巻
  • イザヤ、エレミヤ、哀歌、エゼキエル、ダニエルの5つが大預言書で、他全ては小預言書

となっています。

一番有名なのが何と言っても『創世記』でしょう。簡単に説明しますと、神がこの世界をどのように創造したか、人間の生き様などについて書かれています。


律法においては有名なアダムとエバ(イヴ)のお話の他、カインとアダム、ノアの箱舟、モーセの十戒、『天空の城ラピュタ』にも出てきたソドムとゴモラの滅亡、バベルの塔など、現代の多くのアニメやゲームなどにも登場しますね。

これらは全てモーセが直接書いたという説が強いです。


映画化もされたモーセの十戒が神との間で交わした古い契約となります。

ユダヤ教の土台となる法律ともいわれていますが、シナイ山でモーセがまるで神と会話しているように記述されているそうです。

モーセが持っていた無地の石板に、神によって十か条の文字が刻まれました。

その後の歴史で登場したサウルやダビデ、ソロモンなども有名なイスラエル民族の王です。ダビデはミケランジェロの彫刻でも有名ですね。

最終的に彼らはローマ帝国の属国として「ユダヤ」という国を建国しました。

メシアの到来を預言

さらに大預言書にあたる『イザヤ書』の中では、救い主(メシヤ)が現れるという預言についても書かれています。

イスラエル民族がいつから神の存在を信じていたかは不明ですが、彼らは自分たちのことを「神に選ばれた民」と考えていたようです。

自分たちは神に選ばれた民族だから、その神がいつの日か自分達に救世主であるメシヤを送ってくれると信じていました。

イスラエルの歴史を振り返ってみると、他国に滅ぼされたり支配されたりと苦難の連続でした。

つまりイスラエル民族にとって救世主というのは、政治的な解放者という意味合いが強いのです。

その救世主がイエス・キリストであるとした聖書が、まさに新約聖書となるわけです。

つまり新約聖書は旧約聖書の続編ということになりますね。

ユダヤ教の見解は?

しかしここでユダヤ教の間で大きく意見が食い違うことになります。

先に説明したようにユダヤ教では旧約聖書しか聖書とみなしません。


その最大の理由は救世主メシヤは未だに誕生していない、というのが彼らの見解だからです。

イエス・キリストはユダヤ教では救世主ではないということです。

ユダヤ教ではイエスのことを「ナザレのイエス」と呼んでいます。ナザレとはイスラエルの北部地区にある都市の名前で、イエスが幼少期から住んでいたとされる場所です。





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新約聖書について解説

新約聖書の内容はイエス・キリストが生まれた後のイエスの教えや行動、生涯、さらにイエスの弟子達の行動について書かれたものです。

全27巻から成りますが、その内訳は

  • 福音書(これがかの有名な「エヴァンゲリオン」)が4巻
  • マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネら4名の福音書記者によって作成、イエス・キリストの言行録

  • 歴史書が1巻
  • 正確に言うと「使徒言行録」、初代教会の歴史について書かれている

  • 書簡が21巻
  • 初代教会の指導者らによって書かれた書簡

  • 黙示文学が1巻
  • 預言書的な内容、この世の終末がどうなるのかについて書かれている、いわゆる「ヨハネの黙示録」のこと

となっています。


新約聖書は、旧約聖書の内容も理解した時に初めて完全に理解することができます。

もし、新約聖書だけだと、福音書を読んでなぜユダヤ人がメシヤを探していたのか分かりません。

それゆえキリスト教では旧約聖書と新約聖書の両方が用いられています。


旧約聖書ではモーセやダビデ、ソロモンと言った人物が出てきましたが、彼らはあくまで預言者という扱いでした。

しかしイエス・キリストは神の子として登場します、ここが重要です。

イエス・キリストは当時堕落していた教会を戒めるために登場し、人々の間に教えを広めていきました。


そしてイエスの教えを信じた者だけが、神との間で新たな契約を結べるというものでした。

当然これには当時の教会側(ユダヤ教徒)は受け入れることはできませんでした。


ユダヤ教徒にとっては、既にモーセやノアと言った預言者によって神と契約が結ばれていたからです。

いきなり現れた見知らぬ人間から「私を信じる者だけが救われる。」と言われて、すんなりと受け入れる人はいないでしょう。

ここでユダヤ教徒による迫害が始まったのです。

キリスト教を布教させたのは元ユダヤ教徒?

改めて説明しますが、イエス・キリストが旧約聖書で預言されたメシア(救い主)であるというのが、新約聖書の前提です。

しかし先ほども説明したように、ユダヤ教ではイエスのことを救世主とは認めていません。

にも関わらず新約聖書を記したキリスト教徒も、元はユダヤ教徒から改宗した者だったのです。


そしてその最大の貢献者とも言われているのが、使徒のパウロです。

パウロは『最後の晩餐』でも12使徒として登場していませんが、実はキリスト教の中でも超重要人物なのです!

新約聖書はイエス・キリストの生涯を弟子がまとめた「4つの福音書」を根幹としていますが、これら以外の新約聖書はほぼ全てパウロによって記されたものだからです。

新約聖書全体で7割近く、13もの書簡(パウロ書簡ともいう)を書き残しています。

本来ならイエスに最も近かったマタイやルカとがこういった役割を担うはずでしたが、イエスに直接会ってもいない上に、もともと迫害していたパウロによって広まったというのは何とも皮肉です。


こうした背景から「キリスト教はパウロ神学だ!」と主張する人もいるほどです。

以上をまとめますと、新約聖書はマタイ・マルコ・ルカ・ヨハネら4人の使徒とパウロが教えを伝え聞いてまとめ上げた聖書、ということになります。

まとめ

今回は旧約聖書と新約聖書の2つの違いについて詳しくまとめました。参考になりましたら幸いです。

改めて今回の内容をまとめておきます。

  • 「ユダヤ」を漢字で書くと「猶太」
  • 中国語表記も同じ、発音は「ヨウタイ」
  • 旧約聖書はイスラエルの民の歴史や神話が主に書かれており、ユダヤ教とキリスト教の両方で用いられている。またキリスト教では宗派問わず使われている。
  • 新約聖書はイエス・キリストの生涯と教えが主に書かれており、ユダヤ教では用いられていない。内容の約7割は元ユダヤ教徒だったパウロによって作成されている。
  • 旧約と新約の“約”は、“訳す”という意味ではない。

歴史を紐解くと旧約聖書と新約聖書は繋がってはいますが、ユダヤ教では未だに新約聖書が受け入れられていません。

イスラエルの民にとって、キリストはどういった人間として扱われているのか。真実を知るには、ユダヤ教徒が最も多くいるイスラエルに行くしかないでしょう。

イスラエルにはキリスト教とユダヤ教、さらにイスラム教の聖地としても有名なエルサレムがあります。当然聖書についても詳しい人はたくさんいるでしょうね。


また聖書は仮にも世界で最も多く読まれている活字本なので、勉強になるような内容も含まれています。

聖書なんて面白くないと思っている方も、じっくり読んでみれば結構面白いと思う部分は出てきまし、意外とのめりこんじゃうかもしれません。


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