2016年に国際ニュースで話題となったのがパリ協定の発効です。
このパリ協定ですが、簡単に言えば地球温暖化対策の国際的な取り決めです。第2の京都議定書ともいうべき協定と言っていいでしょう。
国際間の枠組みで「協定」と付けられていますが、これって「条約」とどう意味が違うのでしょうか?
「パリ協定」を「パリ条約」と呼んじゃダメなの?
「協定」意外にも「協約」なんていう呼び方もあるよね?
ということで今回は2つの似たような意味を持つ「協定」と「条約」、さらには「協約」の3つの言葉の違い、さらに英語でどう表現するかも解説していきます。
これが理解できれば国際政治通になれるかも!
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「条約」と「協定」と「協約」の違いとは?
この3つの言葉、どれもこれも国際間の取り決めとかでよく使われることが多いです。
違いは何なのか、先に結論から申し上げますと
全部意味は同じ
です。
はい、呆気にとられた人も多いでしょう。
なんと3つの言葉は、単に名称が違うだけで意味としては全く同じなのです。
因みに正式な意味は「国家間において文書により締結される国際的な合意」を指します。
名称が違うのにどうして意味は一緒なのか、これについてはちゃんとした根拠がありました。
条約法に関するウィーン条約
1969年に署名された「条約法に関するウィーン条約」によれば、その第二条には以下のように記述されています。
第二条1
(a)「条約」とは、国の間において文書の形式により締結され、国際法によつて規律される国際的な合意(単一の文書によるものであるか関連する二以上の文書によるものであるかを問わず、また、名称のいかんを問わない。)をいう。
引用元:Wikipedia「条約」より
「名称のいかんを問わない」と書かれていることから、名称を「条約」に限定する必要はないということです。
また名称が変わっても効力に優劣があるわけではありません。
「なるほど。だから「協定」とか「協約」も使ってOKなんだね。
といっても何でもかんでも「条約=協定、協約」と置き換えていいという話でもありません。
意味的には一緒なんですが、「協定」は「条約」に比べ技術的な約束という意味が出てきます。
また母体となる「条約」が先に存在し、その「条約」を基にして成立した合意は通常「条約」と呼びません。
例えば「日米地位協定」は先に日米安全保障条約があり、その条約を前提とする合意となっています。
条約を前提とする約束なのに「条約」と付けてしまうと、凄く違和感がありますね。だから代わりに「協定」を使っているのです。
条約・協定・協約の例
ではここからは過去に採択された国際間の枠組みで、条約・協定・協約とつく具体例を紹介します。
- 日米和親条約:江戸時代末期、日本がアメリカと結んだ歴史上最初の条約
- 日米安全保障条約:日米間の軍事同盟
- ワシントン条約:絶滅の恐れのある野生動植物を保護する条約
- 環太平洋パートナーシップ協定:通称「TPP」、関税撤廃を含んだ多国間貿易協定
- パリ協定:気候変動に関する多国間の合意
- 日米地位協定:在日米軍の基地の範囲と犯罪発生時の対応を定めた約束
- 日本プロフェッショナル野球協約:日本野球機構が日本プロ野球の選手契約の手続きを定めた協約
- 日露協約:日露戦争後に日本とロシアがお互いの権益を認め合った協約
因みに「協定」と「協約」以外だと、京都議定書の「議定書」、日中共同声明の「声明」、日露共同宣言の「宣言」、国際連合憲章の「憲章」などがあります。
こうして見るといろいろな表現があるんだな
英語での表現は変わってくる?
日本語で「条約」を意味する言葉は、「協定」と「協約」などがありますが、これらを英語で表現するとどうなるでしょう?
試しに「条約」と英語辞書で検索すると、実は様々な英単語が出てきます。
- treaty
- pact
- agreement
- convention
全て意味的には同じですが、一般的に「条約」といえば「treaty」と訳すことが多いです。
また2番目の「pact」はほぼ「treaty」と同じです。
3番目の「agreement」は「協定、協約」の意味合いが強いです。実際「パリ協定」を英訳すると「Paris Agreement」となります。
4番目の「convention」も「条約」の意味はありますが、どちらかといえば「大会、会議」と言った意味合いが強くあまり使われません。
おまけ:パリ協定が重要視される理由とは?
ここからはおまけとなりますが、気候変動に関するパリ協定がなぜ重要視されているのか見ていきます。
理由はアメリカと中国、インドなど二酸化炭素の世界3大排出量を誇る国が参加していることにあります。
地球温暖化を加速させている最大の原因が二酸化炭素を始めとした温室効果ガスの増大と指摘されています。
その温室効果ガスの削減を目指し、これ以上地球の環境を悪化させないことを目的としてそれまで幾度となく国際会議で議論されてきました。そしてその温室効果ガスの削減を初めて明確に義務化させた協定が1997年に採択された京都議定書です。
ただしこの協定にアメリカと中国は参加しませんでした。
人口の多さ、経済の規模などでこの2大国家が世界で最も二酸化炭素を排出している国です、その米中が参加しない協定になんの意味があるんだ?とこれまで批判されてきました。
しかし今回のパリ協定は、なんとこの米中がともに参加、世界第3位の排出量を誇るインドも参加しています。
さらに気候変動枠組み条約に加盟する全196か国全てが参加していて、産業革命前からの世界の平均気温上昇を2度未満に抑える、また平均気温の上昇を1.5度未満に抑える、というのが趣旨となっています。
先進国だけが削減の義務対象となっていた京都議定書とは違い、発展途上国を含む全ての国が参加して自ら削減目標を設定して取り組む、という点が大きく異なっています。
これがパリ協定が最も重要視される大きな理由です、排出量が多いアメリカ、中国、インド、EUはもちろんですが、そこまで排出量が多くない発展途上国全ても削減義務を負うということはかなり意義が大きいと言えます。
まとめ
今回は条約と協定と協約の3つの違いについて解説してきました。
最後におさらいとなりますが、3つとも名称は違えど意味は同じです。
個人的には「協定」という言葉は、労働協定にも使われるので、国際間の枠組みという意味なら「条約」と言ったほうが無難かもしれません。
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