日本列島の地図を見ると、北海道の北側に大きな縦長の島があります。
この島の名前は「樺太」と言いますが、括弧書きで「サハリン」と記載されている地図もあります。
樺太とサハリン、一体この2つの言葉は何が違うのでしょうか?そしてこの島は現在どこの国が領有しているのでしょうか?
さらに気になるのは、同じく北海道の東側にある北方領土ですね。その北方領土の内で最も面積が大きい択捉島は現在ロシア人が多く住んでいて、開発も大きく進んでいます。
その択捉島の地理情報や現在の開発状況についても紹介していきます。
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樺太とサハリンの違いとは?
北海道の北、ユーラシア大陸の東方、そしてオホーツク海の南西部に位置する島、これが樺太です。
実はこの島は厳密には日本列島に含まれます。南北約950km、東西の幅最大約160kmで南北に細長いのが特徴ですが、その面積も世界第22位の大きさを誇り、世界21位の北海道に次ぐ大きさなのです。
この島の現状を簡単に説明しますと、第二次世界大戦後からソビエト連邦及びロシア連邦が実効支配しています。
人口は約50万人で最大都市は「ユジノサハリンスク」(人口約20万人)。
さて日本語で「樺太」という名前ですが、実はカタカナで「サハリン」とも記載されています。
結論から言えば、「サハリン」とはロシア語になります。ただ意味と由来は日本語とロシア語で若干異なるようです。
- 樺太:アイヌ語の「カムイ・カラ・プト・ヤ・モシリ」が由来、意味は「神が河口に作った島」
- サハリン:満州語の「サハリヤン・ウラ・アンガ・ハダ」が由来、意味は「黒竜江の対岸の島」、古くは「サガレン」とも言われた
「樺太」はアイヌ民族の言葉、そして「サハリン」は満州語の言葉だったんです。
しかしそもそも、どうして2つの言葉が混在するのでしょうか?
現在は樺太はロシア人が実効支配していますから、「サハリン」と表記するだけでいいとも思われますが、実はそうもいかない事情があったんです。
歴史的背景を探っていきましょう!
樺太(サハリン)は元々日本領だった!
樺太という表記が正式に定められたのは、なんと明治時代にありました。
当時の政府が北海道開拓使を派遣し、北海道の北にある大きな島を現地のアイヌ民族の言葉を狩りて「樺太」と表記しました。
そして日本が正式に島であることを突き止めた記録がヨーロッパに伝わり、国際的にも樺太が島であることが認知されました。
※この時まで清やヨーロッパは樺太を正式に島と認めていませんでした。
理由は当時の測量技術では「樺太」が島か半島かがはっきりしませんでした、また冬の間は凍結し陸続きになってしまうことも関係していました。
正式に島と認められた樺太ですが、それでも日本の領土とはなりませんでした。
しかし1904年の日露戦争の終結で結ばれたポーツマス条約によって、樺太の南半分である「南樺太」が日本領と正式に認められたのです。
そして北半分はロシア領で、ロシア語の「サハリン」で表記されることになりました。
つまり樺太は、日本とロシアで領土を折半していた形になります。
ところがこの歴史に終止符が打たれたのが、第二次世界大戦後です。
この戦争終結後に結ばれたサンフランシスコ講和条約によって、日本は南樺太を放棄する形となりました。
現在では日本人は住んでおらず、ロシアは樺太全土を実効支配している形となります。
正式にはロシア領でもない?
しかし正式には樺太はロシアの領土とも国際的に認められていないのです。
その理由は、サンフランシスコ講和条約の場にソ連が参加していなかったから。
つまり日本は放棄していたんですが、ソ連に帰属される法的根拠がないわけです!
だから国際法上、南樺太は帰属未定地ということになっています。
南樺太の部分が白色で塗られているのはこのためだったんだね
国際法上ロシアの領土ということにもなっていないので、日本側としても安易に「サハリン」と明記するわけにはいきません。
仕方ないので、「樺太」と「サハリン」を併記するという形をとっているわけです。
因みにソ連側の意見は、日本は領有権を放棄し、かつ戦後の国際レジームを規定したヤルタ会談と、既にソ連国内法によって編入されたということを根拠に挙げています。
択捉島の地理情報の紹介
さて同じく国際的には帰属未定地とされていて、かつロシアが実効支配している北方領土に目を移しましょう。
北方四島の中でも択捉島は面積が約3000㎢あり、千島列島の中で最大の島です。それだけではなく、実は日本列島を構成する島々の中でも本州、北海道、九州、四国に次いで5位の面積を誇ります。沖縄本島よりも大きいのです。
自然に関しては標高1500mを誇る散布山や1300mを超える神威岳、さらに指臼岳といった火山が多くあり温泉も湧き出ています。
現地に住んでいる人々は周辺の海域で漁業で生計を立てている人が多く、特にカニの漁が盛んで島の重要産業になっています。
現在はロシアに実効支配されていますが、行政区上で考えると択捉島は北海道根室市の振興局に属しています。ただこれは日本側による行政区分です、あくまで領有権は日本にあるので、根室市役所では現在も戸籍の管理をしています。
因みに実効支配しているロシア側ではサハリン州のクリル管区という行政区に属しています。
進む島の開発状況
1991年にソビエトが崩壊して、ロシア連邦が成立して以降は北方領土の開発が急速に進みました。
ユダヤ系ロシア人のアレクサンドル・ベルホフスキー氏が創業した水産加工会社が、周辺の豊富な水産資源と北米アラスカの冷凍食品市場と連携したことで、めざましい成長と発展を遂げることに成功しました。
また北方四島には地下資源も豊富にあり、北部の茂世路岳には、レアメタルであるレニウムが大量に埋蔵されていることが地質の調査で明らかになったそうです。
レニウムとは主にロケットノズルや超耐熱合金、質量分析計のフィラメントなどの特殊な用途で用いられるレアメタルで、ロシアの科学者たちは、レニウムの世界有数の産出源になり得ると見なしています。
空港の開発・整備も着実に進んでいて、2014年には紗那村に全長2300mの滑走路を誇るイトゥルップ空港の建設が完成して、同年9月にはセルゲイ・イワノフ大統領府長官が訪問しています。
この空港から、サハリン島(樺太)やロシア本土、さらに事情が許せば日本本土からの航路が就航する予定であり、観光事業にも大きな弾みがつくことが期待されています。
そして経済的な発展だけでなく軍事基地の増設も進んでいます。特に2014年のロシアによるクリミア併合以降は国防を強化しています。
2016年4月にはアメリカ海軍へのけん制を考慮して、対艦ミサイルなどを配備し、軍事拠点の増設・強化すると発表しました。
まとめ
以上樺太とサハリンの違い、及び択捉島の開発状況の説明です。現状ロシアによる開発が着実に進んでいて、ロシア人の居住人口が増えているのが現状です。
現在は日本人はビザなし交流と言う事業で北方四島に自由に行けるようになりましたが、それでも施政権はあくまでロシア側にあるので、日本人が居住するにはロシア国籍を取得しなければいけません。日本人としては北方四島には住めないのが現状です。
昨今日本の政権がプーチン大統領との会談を何度も重ねて、北方領土返還に期待が集まっていますが未だ進展がありません。ヨーロッパとアメリカ含め国際的にも、北方領土は日本の領土という意見が大半なので、日本は国際連合を通じてもっとアピールしたほうがいいかもしれないですね。
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