SFの世界では遠くの惑星に移動するシーンがよく登場します。

しかし遠くの惑星に移動するとなると、何億kmとか何兆kmとか、途方もない距離を移動することになります。

例えば現実世界だと地球と火星との距離は、最も近い時でも5000万km以上も離れているのです。


これだけの距離を数日以内に移動するためには、この世で最も速い「」に限りなく近い速度で移動する必要が出てきます。

そしてSFの世界ではその光に近い速度として、亜光速という概念が登場することがあります。

外国人男性

映画「スター・ウォーズ」で聞いたことあるけど、具体的にどのくらいのスピードなの?

好青年

もしかして光速よりも速いの?

単なる光速ではなく、「亜」という漢字が付くだけで何が違ってくるんでしょうか?

今回は光速と亜光速の違い、亜光速の定義や超光速の可能性についても触れていきます。

SF好きな方はご覧あれ!




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「亜光速」とは?光速との違いって何?

この世で最も速い速度で移動するのが光とされています。

これは物理の授業で習ったことのある人も多いでしょう。具体的なスピードとしては、毎秒約30万km、地球を7周半も移動できる速さです!

※光速について詳しく知りたい方は、以下の記事をどうぞ!

ではSFの世界でよく登場する「亜光速」とは、一体どんな速度なのか?

一言で簡単にまとめますと、このようになります。

亜光速は光速よりも遅いが、光速に近い速度


ここで漢字の「亜」の意味を簡単に解説しますと、「次の、下の」となります。つまり「亜光速は光に次ぐ速度」となるわけです。

「具体的に光速よりもどの程度遅いの?」という疑問については詳しい解説は後述しますが、およそ90%とされています。

すなわち光速が秒速30万kmなので、亜光速は約27万km程度の速度となります。

男性1

地理の授業でも習う「亜熱帯」というのは、熱帯に次いで気温の高い地域となるね。

この用語が登場する作品として、ジョージ・ルーカス監督で有名な『スター・ウォーズ』シリーズがあります。

同映画では宇宙船の推進技術として、惑星間を移動するために「亜光速ドライブ」というエンジンを動かしています。

映画内で登場するナブーとタトゥイーンの2つの惑星間の移動にも使われました。

仮に秒速27万kmなら、ある惑星との距離が8000万km離れていても、およそ300秒で着ける計算です。

現実世界でもこんなエンジンがあったら、地球と火星との間でも10~20分くらいで往復できるんです!

惑星名 地球との距離 時間(分)
金星 約1億km 約6分
火星 約1億km 約6分
水星 約1億5000万km 約9分
木星 約7億km 約40分
土星 約15億km 約93分

表中の時間は光速の90%として計算しています。

他の太陽系にある惑星との移動も、やはり亜光速移動なら相当速くなりますね。




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光より速くすればいいのでは?

だけどここでちょっと腑に落ちない点が出てきます。

若いギャル

亜光速が凄く速いこともわかったけど、それなら光より速く移動すればもっと速く着けるのに。

確かに光より速く移動すれば、その分目的地に移動する時間も短縮できます。

実際映画『スター・ウォーズ』でも、亜光速ドライブよりも速く移動できる「ハイパー・ドライブ」というエンジンも登場し、光速の何倍ものスピードで移動できます!

物理の世界で言う超光速移動になりますが、別の作品だと『スター・トレック』にも登場します。


しかしこのハイパー・ドライブが出てくるのは、惑星間の移動ではなく、あくまで恒星間での移動のみとなります。

惑星間はどんなに遠くても距離はせいぜい10億kmで、亜光速でも長くて1~2間程度の移動に留まりますが、恒星間となると何光年という距離に膨らみます。

1光年とは光の速さで1年もかかる距離です。


具体的な数字は9兆4600億kmとなるのですが、亜光速は光より遅いので目的地に着くのに何年もかかる計算になります。

現実世界で例えるなら、

  • 東京から新大阪まで行くには新幹線(亜光速)
  • 東京からハワイまで行くには飛行機(超光速)

といった感じですね。

要するに距離が近いからわざわざ超光速で行く必要はないことになるわけですが、これはあくまで映画内での都合です。


実は光速については、もっと知っておかなければいけない重大なことがあります。

それがSFと現実世界との最大のギャップになっているわけですが、どういうことでしょうか?



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光より速く移動することは不可能!

光速について最も大事な理論を提唱したのが、物理学者のアインシュタインです。

彼の発表した相対性理論によれば、物質は速度が上がれば上がるほど質量が増え、光速に達すると無限大となってしまうのです!


簡単に説明しますと、「物体を加速させればさせるほど速度は上がり上限はない。」というのがそもそも間違いということになります。

速度の計算や加速度の計算と言うのは、その値が光速よりも十分小さい時だけ有効なのです。


これを数式を用いて解説するとこうなります。

まず相対性理論において、運動する物体の持つエネルギーは以下のように表されます。

分母の部分を見てもらえればわかりますが、物体の速度vが光速cに限りなく近づくと、分母が0に近づいていきますね。

分母が0に近づくということは、その物体のエネルギーEは無限大になります。

つまりほぼ無限大のエネルギーが必要となるから、光速に近づくことは不可能ということが言えます。


これは言い換えれば物体のエネルギーが、質量に転換されるということです。

質量とは物体の「動かしにくさ」とも表現できますが、要は物体は速くなれば速くなるほど、より動きにくくなるということになります。

光の速度がこの限界点になるわけで、これの90%を超えるとより顕著になるとされています。


また上の画像から、光速を超えてしまうと、(v/c)の部分が1以上の数値になりルートの中身がマイナスの数値になることもわかります。

数学で習う知識ですが、ルートの中身がマイナスになると虚数になりますね。

つまりエネルギーEが虚数になってしまうわけですが、これも理論上あり得ないことです。


以上のお話から、光速以上の速度を実現することは不可能、ということがわかったでしょう。

光速の値が秒速30万km、正確には299,792,458m/sですが、これよりも速くなることはありません。

超光速はSF作品のご都合主義!

しかし宇宙というのは果てしなく広大です。

現実世界でも太陽系の端から端までの距離、すなわち直径が2.68光年もあるのです!


また太陽系が属する天の川銀河の直径が約10万光年、太陽系から銀河系までの中心が25,000光年も離れているとされています。

ましてや銀河系と銀河系との間の移動なんか、何千万光年とかになるから夢のまた夢です。


映画『スター・ウォーズ』は巨大な銀河系共和国が登場しますが、光速を超えられないとなると物語が成り立ちませんね。

SFの世界ではこれでは都合が悪いので、仕方なく超光速の移動技術が登場しているわけです。

超光速とは限らない?


因みに『スタートレック』シリーズでは、亜空間と言う架空の空間内を移動することで、実質ワープ航法をしているということになります。

これは日本のSFアニメ『宇宙戦艦ヤマト』でも同様ですが、あくまでワープするということになるので光速以上の速さで移動しているわけではありません。

おまけ:光速以上で動く粒子とは?

光速以上を実現することは理論上不可能なことがわかったのですが、実は光速以上で動く粒子をある科学者が提唱していました。

ドイツの物理学者アルノルト・ゾンマーフェルトはその粒子をタキオンと名付けました。ギリシャ語を元にした造語だそうです。


タキオンとは、その性質上質量が虚数となるから、上で解説した式を基に考えると、確かに速度が光速を超えるわけです。

しかも質量が虚数だから、どんなに減速しても光速以下になりません。

これとは逆に、質量が正の実数となる通常の物質がターディオンと言って、どんなに加速しても光速を超えることはありません。


しかし超高速で動くと仮定されていますが、あくまで理論上存在するとされているだけで、現実に観測出来ているわけではありません。

もし存在が確認できたら恐らくノーベル賞どころか、世界が激変するくらいの大発見になりますね!

まとめ

今回は光速と亜光速の違いと、光速を超えることができない理論について詳しく紹介しました。それではまとめといきましょう!

  • 光速は秒速30万kmでこの世で最も速い、亜光速は光に次ぐ速度と言う意味で光速の約90%ほど
  • 亜光速は秒速27万kmほどで、SF作品内では惑星間を移動する際に用いられる
  • 光速より速く移動する技術は多くのSF作品で登場するが、現実的に光速の壁を超えることは不可能
  • 「ワープ航法」といって、あくまで光速の壁は超えない設定をする作品もある
  • タキオンという超光速で移動する粒子は提唱されているが、その存在は確認されていない



物理学に精通している学生らにとっては、光速の壁は超えられないことは常識となっています。

今はまだ「フィクションだから」という縛りがあるわけですが、光速の壁をいつか本当に超える時が来てほしいと願ってはいます。

というより『スタートレック』では、真空中でも音が伝わる技術があるみたいですね。これもいつか出来るんでしょうか?




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