地球の大陸の中で南極大陸は長い間人類にとって未開の地でした。

南極大陸はご存知のように1年中雪と氷に閉ざされている地域で人は定住していません。

人も住んでいないから当然政府・独立国もないわけです、五輪の輪っかの数も南極の分は入らず5個のままですね。

もしも温暖化が進んで南極大陸に人が住めるようになったら、当然各国による領有権争いが起きると思います。

ところが歴史を遡れば戦前にいくつかの国が南極大陸の領有権を主張していた経緯があります。

一体どういった国々がどういった領有権を主張していたのでしょうか?

そして現在では領有権の主張は認められてませんが、その経緯についても詳しく解説していきます。




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南極の領有権を主張している国々

南極大陸は面積1400万㎢でオーストラリア大陸よりも大きいですが、サイズがサイズなだけにこれまでに多くの国が探検し多くの国が領有権を主張してきました。

最も早く南極の領有権を主張したのはイギリスで1908年には西経20度から西経80度までの地域をイギリス領として承認されていました。


これを皮切りにその後も続々と南極の領有権を主張する国が出てきますが、それぞれ地域が被らないように調整されていました。

しかしこれに対してアルゼンチンとチリがイギリスの領域に重なるような形で領有権を主張したことで対立が深くなっていきます。

上の画像が各国により主張されたラインです。なおアルゼンチンとチリはややこしくなるのでそれぞれ赤線と茶線のみで記します。


イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、ノルウェー、アルゼンチン、チリ
この7か国によるセクター理論で、南極大陸はそれぞれ扇形の領土に分割されました。

※西経90度から西経150度にかけては、唯一どこの国も領有を主張しなかった地域になります。


特にアルゼンチンに至っては妊娠7か月だった女性をエスペランサ基地へ空輸してそこで子供を産ませ市民権を獲得させて、自国の南極領を巡る論争で少しでも有利に立とうとしたくらいです。

アルゼンチンは1980年代にもフォークランド紛争で大国イギリスと争っていただけに、南極領域の領有権主張については一番強い執念を見せていました。

日本も南極の領有権を主張した?

南極大陸には多くの研究基地があって、多くの国から研究者や科学者が派遣されています。

中でも昭和基地で有名な日本の探検の歴史はかなり古く、1911年に初めて日本人が南極に足を踏み入れたのです。実は日本もこの時に南極の領有権を主張していました。

白瀬矗という人物が率いた探検隊が歩んだ場所を「大和雪原」と命名して、日章旗まで掲揚したのです。


しかし日本が太平洋戦争に負けた後のサンフランシスコ条約で残念ながら放棄せざるを得ませんでした。(そもそも大和雪原自体が棚氷の上だったので陸地にはならずどの道日本領にはならなかった筈です。)




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南極条約で全て凍結!

節目となったのは1959年に制定された南極条約です。

南極条約とは言ってみれば、冷戦中に初めて確立された軍備管理協定です。


南極の地理的要素から考えるとそもそも人の定住が困難なので、領有権主張の根拠となる先占(早い者勝ち)という考えも無理がありました。

そこで南極では先占ではなく、一定の範囲で領域の取得を認めるセクター理論が認められたのです。


ところが先述したようにイギリスを始め多くの国々による領有権主張が活発になると、対立・衝突が避けられず戦争が起きる可能性も高くなりました。

第一次世界大戦、第二次世界大戦、そして冷戦が勃発。

人類にとってこれ以上の戦争の火種を増やしたくなかったので南極大陸では領土主権を認めず、軍事的利用も認めないと定めたのです。

あくまでも南極を自由な学術調査と環境保護が維持される科学的な保護区と位置づけ平和的利用に限定しています。

領有権は放棄されたわけではない!

南極大陸に領有権が存在しないという理由は宇宙条約が参照にされています。

宇宙条約においては宇宙空間にある地球以外の全ての天体では領有権が主張できないと定義されています。


しかし南極大陸は宇宙空間にはなく地球にある大陸です。

南極条約が制定されて半世紀以上経過し未だに各国による領土争いは起きていませんが、地球にある大陸である以上どこかの国や地域に帰属されるべきだという意見も少なからずあります。

事実島のほとんどが氷で覆われているグリーンランドはデンマーク領になっています。

またここで注意すべきは南極の領有権は凍結されたというだけで、放棄・否定されたわけではありません。

ゆえに南極の領土問題は未だに人類にとって未解決という見方もあります、第2のグリーンランドになる可能性は否定できないわけです。

まとめ

以上南極大陸の領土問題についての解説でした、参考になりましたら幸いです!


人間同士の縄張り争い、覇権争いによる衝突で多くの戦争が起きてきました。

今の南極大陸の環境を考えれば、そういった戦争とは無縁のように思えるかもしれません。

しかし科学技術の進歩で南極に永住できる環境が整うのも時間の問題です。


すると多くの人が住んでそこは自分たちの地域だと主張すれば、いつの間にやらその国の領土にされちゃうかもしれませんwwww

平和利用を維持しようとする意識や心構えはあると思いますが、国際法の秩序を守ろうとしない国や地域が出てくるのもおかしくないですからね。


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