沈黙の螺旋という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

あまり聞きなれない言葉ですが、この言葉は文系の方であれば大学の政治学の講義で習うことがあるでしょう。


今でこそ民主主義政治は当たり前になりましたが、その民主主義の名の下で多数派がより有利になる構造を端的に表している言葉になります。

このような現象が起きてしまう理由は人間の心理を追求するとある程度納得できます。

また沈黙の螺旋が原因で選挙結果にも大きく差が出てきます、メディアの影響なども合わせて詳しく解説していきます!




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沈黙の螺旋とは?

この言葉はドイツの政治学者エリザベート・ノエレ=ノイマンによって定義された言葉で、自分の意見が少数意見になることを恐れてマスメディアなどで示される多数派の意見に徐々に従い、少数派の意見も持っている人がはっきりと言えなくなる風潮が拡大することを意味します。


具体例を出しながらわかりやすく解説していきますね。

例えば「国防費を上げる」政策について是非を問う選挙を行ったとします。

国防費に関しては、昨今緊張が高まる北朝鮮情勢について国防を万全にするためにも必要不可欠だ!と多くの政治家や官僚が主張しています。

それに釣られるような形でテレビの評論家や特集でも国防費を上げる重要性が説かれたとします。


それを見た国民の多くが「北朝鮮のミサイルや核開発に備える意味でも国防費を上げないと駄目なんだ!」と納得し、徐々にその意見や考えが正しいという認識が拡大していきます。

その状態が一定期間続きますと、世論調査で「国防費を上げる必要性はあるか?」という問いに対して7~8割近くの人が「必要はある」と回答するようになってきます。

少数派の意見としては「財源を圧迫するから国防費を上げる必要はない」という内容になりますが、こんなことを言うますと多数派の人から

  • 国防費を上げないとか今の北朝鮮情勢をちゃんと踏まえて言っているのか?
  • 中国だって尖閣諸島を狙っているんだぞ!

などと連呼して少数派に対して批判を浴びせます。

マスメディアの特集内容を見ても似たような感じの討論番組が放送されたりしますが、そうなりますと「国防費を上げなくていい」と言っていた人達はますます萎縮し孤立してしまいます。

必然的に国防への意識が国全体で強くなってしまうということです、これが昨今叫ばれている右傾化の一つの原因とも言われています。

沈黙の螺旋が起こる原因は?

人間と言う生き物は周囲の意見を聞いて観察して、自分が孤立していると感じると本能的に恐怖を感じます。この恐怖感こそ人々が少数意見を出すことへの躊躇いを生む要因となっているのです。

少数意見を出すことを躊躇った人々はますます沈黙を守りやすくなり、それがあたかも螺旋を辿るかのようにして沈黙へと追いやられるのです。

これが沈黙の螺旋の正体です。

逆に多数意見を持っていると自覚できた人は自信を持って多数意見を堂々と表明し、共有し合って多くのグループを形成したりします。

マスメディアは単に「多数意見は〇〇で、少数意見は〇〇です。」という事実だけを報道しているだけに過ぎませんが、それを鵜呑みにしてしまう人々が多いのと、メディアしかまともな情報が得られない人が多い故にこういった現象が起きてしまうのです。




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選挙におけるバンドワゴン効果と表裏一体?

沈黙の螺旋についてあらかた説明しましたが、この意味を見て「バンドワゴン効果」と同じでは?

と感じた人も少なくないでしょう。


バンドワゴン効果とは主に選挙においてよく使われる言葉でやはり政治学の分野でも習います。

民主主義政治において選挙はなくてはならない制度ですが、その選挙で優勢と報道された候補者の票数が伸びやすくなる傾向のことを指します。

どうせ投票するなら勝ち馬に乗ろうという心理が働いているのと、自分が投票した候補者が当選したら単純に嬉しいと思う気持ちも理由にあります。


このバンドワゴン効果が働いた選挙の例が1993年のドイツ連邦議会選挙です。

キリスト教社会同盟とドイツ社会民主党が争った選挙でしたが、選挙の半年ほど前からキリスト教社会同盟が勝つと踏んだ人々の票が一気に流れ込んだことでキリスト教社会同盟が圧勝した結果となりました。

敗色が濃厚と報じられたドイツ社会民主党については、自分達が支持する政党は不利だと判断した有権者らが総じて沈黙の螺旋に陥ったことで大敗北を喫した形になったわけです。

まさにバンドワゴン効果と沈黙の螺旋の2つの効果が生み出した選挙結果だったと言えます。


また2009年の日本で起きた政権交代も代表的な例だと言えます。

度重なる自民党政治への批判報道と、それまでずっと世論が抱いてきた政治への不満が爆発した形で当時の麻生政権の支持率は急落し、選挙の事前調査でも「民主圧勝!自民惨敗!」と報道されました。

その予想は的中し民主党は300を超える議席を獲得、自民は200近くも議席を減らす惨敗を記録しました。


これもやはりバンドワゴン効果で民主党が一気に波に乗って無党派層の票を取り込んだ結果圧勝したという形になります。

バンドワゴン効果の凄さが伺えますが、それと同時に自民党を支持するという意見が圧倒的に少数となり沈黙の螺旋に陥ったと言えます。

ただし自民党に関しては2012年の選挙であっさり復活します。それもそのはずで戦後の日本政治は自民党が政権を担ってきた実績があったわけで、長年に渡って支持してきた固定支持層が簡単に離れるということはありません。

バンドワゴン効果と沈黙の螺旋は特に支持する政党がない無党派層に多い傾向だと言えるでしょう。


またバンドワゴン効果や沈黙の螺旋が起きやすいのは日本が小選挙区制であるということもかなり大きい要因です。

小選挙区制では自分が票を投じた候補者が落選すると死票となってしまいますから、これは悪制だと批判する声も少なくないです。

この小選挙区制が続く限り沈黙の螺旋は今後も続いていくと言えるでしょう。

最後に一言!

沈黙の螺旋はメディアが発達した現代人が抱える一種の精神的な病とも言えるでしょう。特に集団性や協調を大事にする日本人はまさにこの傾向が強いと言えます。


しかしこの傾向に変化が訪れようとしています。いわゆるSNSの拡大で多種多様な意見が飛び交うことが当たり前になってきました。

今や個人で自由に何でも発信できる時代です、政権批判や政権擁護、特定の人に対しての誹謗中傷も制限なくできちゃいます。

有名人などはそれが度を過ぎて炎上が発生することもしばしばありますが、テレビや新聞の報道だけでは調べられない意見、考えなどが垣間見えたりします。

その分情報量が多すぎてどれが真実でどれが間違っているか判断しにくいのも事実です。


迷ったらそれこそ自分の判断を信じることです。

いつの時代でも少数派であることを恐れない勇気や信念を持つことは大事です、歴史上の有名人物や成功者らは恐らくほぼ全員少数意見だったでしょう。

日本は昔から「出る杭は打たれる」と言われていますが、そろそろこの傾向を打破しないといけませんね!


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