我々が住んでる地球、そのはるか上空、200km先には、現在数にして約5000基以上の人工衛星が地球の周りを飛んでいるとも言われています。
最早気象観測にも欠かせない衛星ですが、そもそもなぜ上空を飛んでいるにも拘わらず落ちてこないのでしょうか?
飛行機だっていつかは着陸するよね。鳥だって永遠に飛び続けるわけじゃないし
しかも落ち来ないだけではなく、その速度は秒速3km、時速に換算すると約1万kmにも相当します、新幹線の約30倍です。
人口衛星がなぜ落ちてこないのか。実は超高速で動くことと関係していたのです!
高校物理の知識で詳しく見ていきましょう!
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人工衛星が落ちてこない理由とは?
結論から言いますと、「人工衛星が落ちてこない」理由は簡単に言えば
人工衛星の遠心力が重力と釣り合っているから
です。
遠心力とは、回転する物体が外に引っ張られる力、ここでは人工衛星が地球の外に引っ張られる力と思ってください。
この遠心力と重力が釣り合っているから人工衛星は落ちてこない、というのが答えになりますが、この説明でもやや腑に落ちないかもしれません。
そもそも、どうして遠心力と重力が釣り合っちゃうの?
この原理を説明する前に、知っておかなければいけない知識が、ニュートンの万有引力の法則です。
1.アイデアの元祖はニュートン
知っている人も多いでしょうが、ボールを投げると、地球との引力でやがて地面に落下します。この法則を万有引力の法則と言います。
人工衛星だってこの法則に従えば、いつかは落下すると思われますよね。
しかしボールを投げるスピードをより速くすれば、ボールが落下する地点はより遠くになります。
もし山などの障害物がなく、地球がまっ平らなら、ボールをより速く投げると地面に落下する前に地球を1周できないだろうか、という考えが応用として生まれたのです。
地球の半径は約6000km、もし空気抵抗なしで考えたら、ボールが地面に落ちないで地球を一周させるために、必要な速度は、秒速約8kmになります。
ってことは、ピッチャーが秒速8kmで球を投げたらそのまま地球一周するってこと?
しかし実際に地表付近でこのスピードを保ったまま移動すると、空気の密度が高いので、空気との摩擦で熱が生じてしまい、非常に高温になりたちどころに燃えてしまいます。
ニュートンの時代ではここで話が終わってしまいますが、それから時代も変わり、航空技術やロケット技術が目覚ましく発展した現在なら、空気抵抗がほとんどなくなる上空200km以上に、人工物体を打ち上げることが可能になりました。
地表と違い空気抵抗の摩擦がないので、スピードが落ちることなく一定に保てるのです。
2.人工衛星の速度は高校物理で解説
さて「人口衛星の速度を速くすれば地球に落ちてこず上空を一周する」、という説明は何となくですが理解できたでしょう。
しかしこれだけでも納得がいかない点があります。
そもそも地球の上空とはいえ重力が働いているんだから、いくら高速で動くといってもその内落下してしまいそうですよね。
でもそうは問屋が卸さないんです。実は人工衛星の軌道というのは、いわば円運動になるわけですが、この円運動で登場するのが遠心力です。
上の図を見てください。
地球と人工衛星の間に働く万有引力を向心力として、地球の周りを回っています。この万有引力Fが遠心力F’と等しくなるために、地球に落下することなく回り続けられるのです。
そしてこの万有引力Fと遠心力F’が等しくなるには、人工衛星が超高速で回転運動していないといけません。(因みにここでいう万有引力とは重力のことを指します。)
実は月もこれと全く同じ原理で落ちてこないのです。
巨大な天体にもかかわらず、地球とほぼ一定の距離を保ったまま周回し続け落ちてこないのも、この人工衛星と同じです。
正確に言いますと、2つともある一定の速度を超えてしまうと、軌道を外れ地球から離れていってしまいます。
でもそうはならないのは、地球が重力で引っ張っているからです。
仮に少しでも速度が低下したら、重力の方が勝ってしまい高度が下がります。
実際地上から500~600㎞の低い軌道では、空気が完全にないというわけではないので、その抵抗を受けて速度が少しずつ下がります。一年に数㎞低くなることもあるそうです。
そのままでは地球に落ちてしまうので、衛星は時々、エンジン噴射をして再度速度を上げます。すると下がった高度もまた上がります。
この辺の難しい数式での説明は、高校の物理の教科書、参考書に載ってるので勉強がてらそちらをぜひ参考にしてください!
3.静止衛星とスペースデブリについて
私たちの生活の上で欠かせない、もっとも恩恵を受けているのが気象衛星や通信衛星に多い、静止衛星でしょう。
静止衛星とは、文字どおり地上から空を見上げると、空の1点に静止しているように見える衛星のことを言います。
しかし静止しているように見えて、実はもの凄いスピードで地球を1周しているのです。赤道付近の上空3万5800㎞に位置していて、東向きに移動し、1日でちょうど1周するように動いています。
この時の速度は実は秒速3km、新幹線でも秒速80mくらいなので、もはや異次元の速さですね。
ところがそんな静止衛星にも寿命と言うのがあります。いくら上空の空気抵抗がほぼない場所とは言え、空気が全くないわけではなく、長い間動き続けると、徐々に軌道が狂ってきます。
このため、静止衛星にはこの軌道が狂ってきたときのために、軌道修正として利用される燃料が積まれています。この燃料が尽きた時に静止衛星は寿命を迎えるのです。
ここで寿命が尽きた静止衛星は、その後さらに上空にある墓場軌道に移動させることが国際条約により定められています。なぜこのようなことが定められているかと言うと、最近問題視されているスペースデブリ(宇宙ゴミ)を防ぐためにあります。
役割を終えた衛星が、その後意図しない軌道で、別の使用中の衛星と衝突し、さらに別のスペースデブリを発生させることがあります。
そうした事態を防ぐためにも、この墓場軌道に乗せる必要があるのですが、実際にこの墓場軌道への移動に成功できるのは全体の3分の1程度と言われており、今後増え続けるであろうスペースデブリの根本の解決策として、見直す必要があると思われます。
まとめ
今回は人工衛星が落ちない理由について解説てきました。
まとめると人工衛星は超高速で回転し、遠心力と重力が釣り合っているからというのが落ちてこない理由となります。
高校物理の知識で説明できますが、大学入試にも問われる可能性が高いので勉強する価値は十分にあるでしょう。
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