プロ野球のマジックナンバーはスポーツニュースなどでよく流れます。シーズン後半はこのマジックナンバーが嫌でもスポーツ新聞に掲載されて、多くの野球ファンが気になりますよね。
基本は現時点で1位のチームに点灯することが多いのですが、状況によっては2位のチームに点灯することもあります。
そして試合を消化するごとに減ったり、消えたりすることもあります。
優勝マジックとも言いますが、改めてその数字の減り方や計算法って一体どうなっているんでしょうか?
今回は野球に詳しくない方のためにも、基本的な意味や語源も含めて詳しく解説していきます。
さらにマジックに関する様々な記録や珍現象も一挙に紹介します!これを読めばさらにプロ野球が楽しめますよ。
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そもそも野球のマジックとは?
まず野球のマジックナンバーの意味を簡単に説明しますと、「他のチームの勝敗結果に関わらず、あと何勝すれば優勝が決まるか」を表した数字です。
すなわち「マジック10」だったら後10勝、「マジック20」だったら後20勝すれば優勝という意味です。
詳しい減り方や計算方法については後述しますが、通常点灯したチームが勝利した時と対象となるチームが負けた時に1ずつ減ります。
点灯する条件とは?
マジックナンバーをよく耳にするのはシーズン後半(8月以降)が多いですが、この時期になると1位のチームのファンはそわそわします。
なぜそわそわするのかと言いますと、マジックが点灯する頃だからですね(^^
シーズン後半になれば首位攻防戦の結果次第で、1位のチームに「マジック点灯!」という文字が大きくスポーツ新聞に掲載されます。
ではこのマジックナンバーが点灯する条件とは何でしょうか?
簡単に言いますと、「他の全チームに自力優勝の可能性がなくなった時」に点灯します。
日本のプロ野球はパ・リーグとセ・リーグの2リーグ制ですが、どちらのリーグも
- マジックが点灯
- マジックナンバーを減らす
- マジックナンバーを0にする
という流れで、リーグ優勝が決まる形です。
ここで自力優勝という言葉が出てきましたが、これは自チームが他のチームの勝敗の結果にかかわらず優勝する状態を意味します。
残りの試合に全試合優勝すれば、確実に優勝できますね。
つまり自力優勝できなくなったチームが優勝するには、他のチームが負けてくれないとできないわけです。
マジック点灯は何もリーグの優勝マジックだけで点灯されるとは限りません。
現在ではセパ両リーグでクライマックスシリーズが行われるので、3位以上のチームでも日本シリーズ進出へのチャンスがあります。
つまりリーグ優勝以外にも、クライマックスシリーズ進出が決定するマジック(略してCSマジック)というのも使われています。
リーグ優勝する条件とは?
日本のプロ野球ではパ・リーグとセ・リーグの2つのリーグで、それぞれ6チームずつありますね。
途中で両リーグ同士の交流戦も挟みますが、基本的にリーグごとで総当たり戦を行い、リーグ優勝を決めるという流れになっています。
リーグ優勝というのはリーグの順位で1位が確定した、という意味です。
仮に2位以下の全てのチームがその後の試合で全勝したとしても、1位になれないことが確定した時に1位のチームの優勝が決まります。
因みにここで言う1位というのは、全試合を消化した時に勝率が1位になることを意味します。
勝率というのは全試合中何試合勝利したか、その割合(%)を表した数字ですが、実は現行のプロ野球の勝率の計算は、分母の試合数で引き分け数を除いています。
このため勝利数が同じでも、引き分け数次第で勝率は変わってきます。
仮に100試合消化した場合、AチームとBチームともに55勝しても、Aチームの引き分け数が10試合、Bチームが5試合しか引き分けしていなかった場合、
- Aの勝率:55/90=0.61
- Bの勝率:55/95=0.58
となって、同じ勝利数でも勝率が違ってきます。
逆に言えば勝利数が少なくても、引き分け数が多ければ勝率が高くなるのです!
では勝率が同じになった場合、もしくは勝利数が少ないチームが1位になった場合はどうなるのかですが、これはプレーオフを行うことでリーグ優勝を決定する形になります。
実際セ・リーグでは2001年から2006年までは勝率が並んだチームがある場合、プレーオフを実施するルールがありましたが、結局実施には至りませんでした。
マジックの減り方を詳しく!
ここからはより詳しくマジックが減少する仕組みについて見ていきます。
まず基本的なマジックの減り方としては以下の2パターンがあります!
- マジック点灯チームが勝利⇒1つ減る
- マジック対象チームが敗北⇒1つ減る
実はこの2つのパターンさえ覚えてしまえば、普通に野球を楽しめます。
仮に負けても対象となるチームが負ければマジックは減るので、優勝が決まる瞬間などは他チームの勝敗もチェックする必要が出てくるんですね。
ここでマジック対象チームという用語が出てきますが、これは1位のチーム以外で残り試合を全勝した場合に最も勝率が高くなるチームのことです。
2位のチームがほとんどですが、残り試合数の関係で3位以下のチームも対象となります。
例えば2018年のセ・リーグでは、マジックが初めて点灯した時の広島の対象チームは3位のヤクルトでした。
2位のチームは巨人でしたが、広島と今後直接対決する試合数が多いのがヤクルトの方だったのです。
引き分けや試合無しも含めると複雑?
ところが引き分けや試合無しのパターンも含めると、減ったり減らなかったりするのでややこしくなります。
マジック点灯チームと対象チームがそれぞれ①勝った時、②負けた時、③引き分けの時、④試合無しの合計16パターンがあるのですが、表にしてまとめたのでご覧ください!
詳しい説明をすると凄く長くなるので、簡略化すると上のような図になります。
引き分けや試合無しだと減ったり減らなかったりするのですが、これを見てもらえればほぼ一目瞭然ですね!
この部分はマジック点灯チームが勝って、マジック対象チームが負けた場合となります。減り方は両方をプラスして2になるはずですが、後述するような例外的な減り方もします。
マジックの計算法とは?
マジックナンバーの数字はどんな方法で算出されるのでしょうか?
実はその算出方法はWikipediaに詳しい方法が掲載されています。
しかし床関数という難しい関数を用いたりしてあまりにも複雑なので、ここではあくまで簡単な式を以下のように示します。
チームAにマジックが点灯した場合で、チームBがマジック対象チームの場合です。
上の式は引き分けを除いた場合での式です。
では2018年のセ・リーグを例にして解説しましょう。
この年は広島東洋カープがセ・リーグを制覇しましたが、8月15日にマジック32が点灯して、9月26日のヤクルト戦に勝利してマジックが0になり優勝を決めました。
マジック対象となっていたチームは3位のヤクルトで、順位表は以下のような感じでした。
マジックの計算式に当てはめると、
M=「ヤクルトの勝利数」+「ヤクルトの残り試合数」-「広島の勝利数」+1
=48+43-69+1=33
となるので、広島のマジックナンバーは33になるはずです。
でも一致していないですね(;^^
計算ミスかと思いきや、実はこれは厳密には引き分けを考慮していません。
広島の引き分け数が2、ヤクルトの引き分け数が1になっているので、ここでややズレが生じています。
もちろんズレると言ってもそこまで大きな数字にはなりません。
引き分けの試合数はどこのチームもそこまで多くはならないので、この計算式でもある程度の目安にはなるでしょう。
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マジックが消える場合とは?
マジック点灯は自力優勝が可能なチームが残り1チームになった時に発生しますが、1位のチームが連敗するなどで成績が悪化すると、他のチームにも再度自力優勝の可能性が復活します。
自力優勝の可能性が復活するということはマジック点灯の条件から外れるため、1位のチームのマジックは消滅します。
2017年においても、セ・リーグの広島において一度点灯したマジックが消滅するといったことがありました。
マジックが一度も点灯しない場合もある?
自力優勝が可能な2チームの直接対決が最後に残っていたために、マジックが点灯せずに優勝が決まる、といったケースもあります。
これの最たる例が1994年のセ・リーグです。
この年は巨人と中日がシーズン終盤までともに譲らない形で首位争いをしていました。
そのためシーズン終盤まで、両チームともにマジックが点灯せず最終戦までもつれこむ形となりましたが、何とプロ野球史上初となる「最終戦時の勝率が同率首位で並んだチーム同士の直接対決」となったのです!
最終戦直前での巨人と中日の成績はともに「69勝60敗」、結果は巨人が勝利してリーグ優勝を果たしました。
試合が行われた日程をもとに『10.8決戦』と呼ばれていますが、プロ野球史に残る「最高の試合」として、今でも多くのファンの間で語り継がれています。
最速&最大記録は1965年の南海!
これまでのプロ野球の歴史の中で最も速い点灯となったのが、1965年の南海ホークスで7月6日に優勝マジックが点灯しました!
7月6日といいますと、まだオールスターゲームすら開催されていませんね(;^^
この年の南海は、初めて三冠王に輝いた野村克也の大活躍もあって、シーズン序盤から好調を維持。
49勝9敗で勝率0.845という驚異的な強さもさることながら、点灯時の数字が62でこれも歴代最高です。
ところが史上最速のマジック点灯にも関わらず、その後の南海は低迷します。
結局前半の絶好調でなんとか優勝しましたが、あまりの成績の低迷で客足もがた落ちしたそうです。
因みにマジック点灯後の成績は39勝40敗3分となっています。
点灯後最大の逆転劇!
2008年のセ・リーグは、シーズン序盤から阪神タイガースが驚異的な強さで首位を独走していきました。
7月8日の時点で2位の巨人と最大で13ゲーム差もつけて、7月22日でマジックナンバー46を点灯させます。
この46というのはかなり大きな数字ですね、しかも7月下旬での点灯も異様な速さです。
誰もが阪神の優勝を疑わなかったほどの強さでしたが、北京五輪で主力メンバーが抜けた後は調子が上がらず、徐々に失速していきます。
対して調子を上げてきたのが巨人で、若手の坂本選手の活躍を筆頭に、補強した外国人選手の大活躍などもあって徐々にゲーム差を縮められていきます。
そして9月21日の時点で遂にゲーム差なしの所まで追い上げられ、10月8日の直接対決でついに巨人が首位奪還。
逆に巨人にマジックナンバー2が点灯し、その後巨人が逆転優勝を果たしたのです!
この年の巨人の大逆転劇は、1996年の11.5ゲーム差をひっくり返した「メークドラマ」に因んで、「メークレジェンド」と呼ばれています。
逆に驚異的な速さでマジックを点灯させた阪神は、クライマックスシリーズも調子が上がらず中日に敗れてしまいました。
この年に日刊スポーツ出版社から発売された「Vやねん!」という雑誌が、あまりにも壮大なネタ雑誌となってしまいました...
マジックに関する珍現象の数々
ここからはプロ野球のマジックの点灯に関して、いくつか珍現象を紹介しておきます。
マジックというのは必ずしも想定通りの挙動を示すとは限りません、またプロ野球の歴史に残る名場面などもあって必見ですよ!
1位のチームにマジックが一度も点灯せず優勝!
プロ野球の試合は雨天中止などがあると、その日の試合は順延となります。
特に昔のプロ野球はドーム球場もなく屋外球場ばっかりなので、このようなケースは珍しくありませんでした。
これによって起きた珍現象として、1988年の2位の近鉄バファローズのマジック点灯があります。
実はこの年のシーズン後半まで、首位をキープしていたのは西武ライオンズでした。
しかし最大8ゲームもあった差を2位の近鉄が追い上げて、10月4日の直接対決でも勝利し、2位のバファローズにマジック14が点灯します。
この現象は近鉄がロッテオリオンズ(現在のロッテ)との何試合かが雨天で順延になり、その分西武よりも残り試合数が増えたために起きました。
その後は西武も近鉄もお互い譲らないまま試合を消化。
西武が全日程を終えましたが、2位の近鉄がまだ4試合残しており、この4試合で3勝すれば優勝という状況でした。
しかし近鉄は10月19日のロッテとの最終戦で引き分けとなり、惜しくも優勝を逃しました。
実は当時のパ・リーグでは、「試合開始から4時間を経過した場合は、そのイニング終了を持って打ち切り」という制度がありました。
この制度によって延長10回裏で4時間が経過。
それ同時に西武の優勝も決定してロッテの攻撃中に試合が終了するという、プロ野球史上でも稀にみる悲劇的な展開となりました。
これが通称「10・19」と呼ばれるもので、プロ野球史の名場面として今でも語り継がれています。
2014年のパ・リーグでも同じ現象が?
同様の現象は2014年のパ・リーグでも起きました。
この年のパ・リーグでは最終的にソフトバンクがリーグ優勝しましたが、実はソフトバンクには1度もマジックが点灯しなかったのです。
代わりにマジックが点灯したのが2位のオリックスで、9月25日の西武戦で勝利しマジック7が点灯しました。
これもやはり残り試合数が違っているために起きた現象で、この時点でのソフトバンクの残り試合数が3で、オリックスは8でした。
オリックスの方がギリギリソフトバンクの勝率を上回れる状態でしたが、10月2日の直接対決(通称「10.2決戦」)でソフトバンクがかろうじて勝利。
結局ソフトバンクは一度もマジックが点灯しないまま優勝を決めました。
2減るはずが1しか減らない?
これは2009年9月20日の巨人と中日との間で起きた現象です。
9月20日の試合前は優勝マジック6が点灯していた巨人でしたが、1位の巨人が勝ち、2位の中日が敗れたため、本来なら2減るはずのマジックが“1”しか減りませんでした。
これは両チームの引き分け数が大きく違っているがために起きた現象です。
2009年は巨人の引き分け数が9で、中日の引き分け数が1でした。
巨人は残り14試合で4勝した場合勝率が0.6222、一方中日が残り12試合で全勝すると勝率が0.6223となって、ギリギリ巨人を上回ってしまうのです。
つまり中日が残り全勝した場合、巨人はどうあがいても5勝はしないといけなかったので、マジックナンバーは1しか減らず5になった、ということになります。
これと同様の現象は2017年のシーズンでも起きました。
リーグ優勝したのは広島カープでしたが、8月16日の阪神との直接対決で勝利したにもかかわらず1しか減りませんでした。
この時点での引き分け数は広島が4で阪神が1。
試合前の広島のマジックナンバーは27でしたが、対象チームである阪神との直接対決での勝利なので本来なら2減るはずでした。
やはり引き分け数が広島の方が多かったためか、阪神の残り試合の結果次第では広島の勝率を上回る可能性があったということです。
直接対決1回の勝利で3も減る?
これは2013年のパ・リーグで起きた現象です。
この年のパ・リーグは東北楽天ゴールデンイーグルス(以降楽天)がリーグ優勝しましたが、9月11日の対象チームであるロッテとの直接対決で勝利した際に、楽天のマジックナンバーが“3”も減ったのです!
直接対決での勝利なので本来ならマジックナンバーは2減るはずなのに、これはどういうことでしょうか?
これはパ・リーグの順位決定方式が関係しています。
勝率が1位のチームがリーグ優勝というのはセ・リーグと同じなのですが、仮に勝率が同率で並んだ場合は、
というルールがあるのです。
前日の9月10日の試合終了時点では楽天は対ロッテとの20試合で、12勝していてマジックナンバーは18でした。
仮に残りのロッテとの4試合でロッテが楽天に4連勝すれば、両チームの対戦成績は12勝12敗と並びますね。
しかし翌日の9月11日の試合では、楽天がロッテに勝利し、対ロッテ戦で13勝して勝ち越しが決定しました。
つまり楽天は最終的に勝率でロッテに並んでも、対ロッテ戦で勝ち越ししているので、必要な勝ち数が更に“1”減ってマジックナンバーが15になったのです。
おまけ:マジックの語源って?
今でこそお馴染みとなった野球のマジックという用語ですが、そもそもの語源はビンゴゲームから来ているとされています。
ビンゴゲームのルールを簡単に説明しますと、
- 「5×5」のマスがあるカードが参加者に配られる
- 進行役が無作為に数字を選んで読み上げる
- マスに書かれた数字と一致する数字が選ばれるとそのマスの数字を埋める
- 縦・横・斜めのいずれかの1列が揃えばビンゴが成立する
というのが一般的な流れです。
さてこの時あと1つの数字が選ばれれば、縦・横・斜めのいずれかの1列が揃うという場合に、最も出て欲しい数字のことを欧米では「マジックナンバー」と呼んで、これが野球に転用された、というのが有力な説です。
マジック(magic)というのはこの場合「呪文」を意味します。
「この数字が出てちょうだい!」とおまじないする、すなわち呪文を唱えているようにも見えるからです。
日本ではあと1つの数字でビンゴが完成するのは「リーチ」と呼ばれるので、馴染みがないですね。
実は調べたら他にもいくつか説があることがわかりました。
- 手品のように消えたり出たりして、マジックのようだから
- カレンダーの数字を消す際に、ペンのマジックを使うから
こうした説がありますが、いずれもビンゴに独自に「リーチ」という言葉が定着している日本独自の俗説のようです。
まとめ
以上マジックナンバーの意味と計算法、減り方、さらに様々な記録と珍現象を解説してきました。
長くなってしまいましたが、最後までご覧いただきありがとうございます!
今回調べてみてわかりましたが、マジックナンバーって改めて奥が深いですね♪
今後もマジックナンバーについてはいろいろと面白い現象が発生するかもしれません、まさにマジックですね。
今年はどのチームにマジックが点灯するでしょうか?
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確か、ずいぶん前、ジャイアンのマジックが
ジャイアンの連敗により消え、2位のカープが
優勝したことがあると思います。
調べて下さい。
コメントありがとうございます、管理人のヒデオです。
ご指摘の件は1986年のシーズンのことでしょうか?
この年は巨人と広島が熾烈な優勝争いをしていました。
巨人はシーズン終盤まで確かに首位でしたが、
最後の最後で広島に抜かれ優勝を明け渡しました。
最終的に広島が73勝で優勝しましたが、2位の巨人は75勝でゲーム差はゼロでした。
ただ広島の方が引き分け数が巨人よりも多く、
その影響で勝率が広島の方が上回る形になりました。
ご参考になれば幸いです。