毎年日本に多く訪れる巨大な渦を巻いた低気圧といえば何でしょう?
このように質問されて、真っ先に「台風」という答えを思い付いた人は多いでしょう。
実際毎年夏から秋にかけて嫌というほど天気ニュースで見かけますので、日本人にとっては
大きな渦巻=台風
というイメージが強いかもしれません。
だけど忘れてはいけないのが、渦を巻いたものは何も台風だけではありません。
アメリカだともう一つ、巨大な渦巻として「竜巻」がよく発生します。
海外向けのニュースを見ると、毎年アメリカのどこかで大きな竜巻が起きているよね。
日本でもたまに発生して、凄い被害になったりするけど台風とはどう違うの?
台風と竜巻、この2つは同じ渦を巻いているのが特徴ですが、改めてその違いって何でしょうか?
今回はこの2つの違いを、物理的な知識も交えつつ徹底調査していきますよ!
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台風と竜巻の違いとは?
単純に台風が超小さくなったものが竜巻という関係じゃないの?
同じ渦を巻いているから、こんな考えを抱いている人もいるのでないでしょうか?
答えは「NO!」です。
結論からになりますが、台風と竜巻の違いを一言でまとめますとこうなります。
- 台風とは、最大風速が17m/sまで発達した熱帯低気圧
- 竜巻とは、積乱雲の下で地上から雲へ細長く伸びた渦巻状の上昇気流
台風が熱帯低気圧ですが、竜巻は気流が大きく成長したものです。
ただしこれはあくまで定義による違いに過ぎません。
外見上でも両者は大きく異なっているのが見て取れますが、
- 台風が、直径数百km以上に発達した巨大な渦巻
- 竜巻が、上下に伸びた細長い渦巻
という特徴がありますね。
見比べたら確かに全然違うことがわかります。
また台風は雨を伴うのに対し、竜巻自体はただ風が吹き荒れるだけという点でも異なります。
このように同じ渦巻でも、2つは全くもって別物でした。
決して「台風の小型版が竜巻」という関係ではありません。子供にもこんな適当なこと言ってはいけません!
そもそも台風と竜巻は、その発生する仕組みから大きく違っていたんです!
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台風と竜巻は発生源が違う!
台風と竜巻は何が決定的に違うかといいますと、その発生源にあります。
台風の発生のメカニズム
まず台風からの解説になりますが、こちらについては以前当ブログでも記事にしています。
毎年日本には多くの台風が上陸し大きな被害をもたらします。しかしなぜ台風ってあれほどの風速を誇るのでしょうか。台風を生み出す熱のエネルギー源を詳しく紹介していきます。調べてみると、とても身近な物理現象と大きく関係していました。
上の記事でも紹介していますが、基本的に台風が発生するには、巨大な熱エネルギーが必要となります。
そのエネルギー源となるのが水蒸気の凝縮熱です。
これは夏の暑い時期に高温になった太平洋の海上にある、大量の水蒸気が大きく関係しています。
この水蒸気が上昇気流によって冷たくなり、液体の水に戻る際に発生する熱エネルギーによって台風が巨大に発達するのです。
つまり台風は海水面上で発達する巨大な雲の渦巻です。
竜巻の発生のメカニズム
これに対して竜巻は、台風と違って海水面上だけでなく陸上でも発生することがあります。
その理由は竜巻というのが、そもそも小さな渦巻が発達したものに過ぎないからです。
ではどうして小さな渦巻が、あれほど縦長に伸びるのでしょうか?
そのヒントとなるのが実はフィギュアスケートにありました!
正確に言いますと、高校物理で習うことになる角運動量が関係しています。
フィギュアスケートの選手の回転が速くなる原因とも関連する知識ですが、詳しくは以下の記事でまとめています!
フィギュアスケートの演技を見てみると、回転している選手が腕を組み回転速度が徐々に早くなっていくのが見て取れます。その理由は物理の角運動量保存則が関係していました、高校物理の内容となりますが興味のある方はぜひご覧ください!
ここでは敢えて簡単に解説しますが、実は回転する物体はその回転半径が短ければ短いほど、回転速度が上がる性質があります。
竜巻が起きる仕組みにもこの性質が関係しています。
凄く簡単な解説になりますが、要は発達した積乱雲が、上昇気流によって地面付近にあった弱い渦巻を上下に引き伸ばすのです。
こんなイメージですね。上下に伸びて細くなると回転半径が小さくなるから、より速いスピードで回転できるようになったわけです。
因みにこの時の上端の高度は、最大で1km程度にも達します!
竜巻が発生するニュースを見てみると、やはり細長い渦のようになっているのが見て取れます。
竜巻が発生する天候状態は、なんといっても積乱雲があるので、どんよりと暗く雹や霰などが降っていることもあります。
あるいはほかにも
- 周りにある小さな物が巻き上げられながら飛んでいる
- 耳鳴りがする
- ゴーっという音がする
という状態だと、すぐ近くに竜巻が発生している可能性が高いです。
また上空の積乱雲から柱状もしくは漏斗状に雲が伸びて、それが竜巻と合体して地面に垂れ下がっていることも多いのが特徴です。
ただし「竜巻の元」となる小さな渦の発生する仕組みやきっかけについては、まだ詳しく解明されていない部分が多いのが現状です。
積乱雲とはよく夏の時期に見かける、巨大な縦に伸びた雲のことです。「入道雲」ともいいますね。
『天空の城ラピュタ』にも『竜の巣』という名称で出てきますが、これほど巨大な雲になるのは強い上昇気流の影響です。
落雷や豪雨をもたらすのが積乱雲の特徴ですが、その強い上昇気流によって竜巻を発生させることもあります。
つまり夏の時期に積乱雲を見かけたら、落雷と大雨だけでなく、竜巻にも注意しないといけません!
最近の天気予報だと竜巻注意報を聞く機会が増えたよね。
竜巻の定義とは?
一般的な台風とは、「上空から雲が漏斗状に垂れ下がって細長い渦を巻き、地面に接して移動するもの」、というイメージが強いですね。
もちろんこれでも間違いではありません。
だけど正確に言えば、台風は空中で発生しそれが地面に接しないこともあれば、そもそも上空の積乱雲から雲が伸びてこないこともあります。
単なる気流の渦自体は空中で発生します、また雲が伸びてこないと目で確認するのが難しいです。
細かい話になりますが、竜巻は「陸地に接したもの」以外も含めます。
もちろん海上で発生することもあります、その場合水柱を伴っていることが多いです。
英語表現は注意が必要!?
ここまでは台風と竜巻の発生とその性質の違いについて触れてきました。
ここからは少しおまけとなりますが、両者の英語表現について触れていきましょう!
まず台風からですが、これを英語で言うと何でしょうか?
恐らく大半の人は「ハリケーン」と答えると思いますが、実はそれは正確には間違っています。
ハリケーンとは主に北大西洋上で発生する大型の熱帯低気圧、というイメージが強くそれが台風の英語名だと思っている人も多いですね。
だけどハリケーンの定義が「最大風速33m/s以上に発達した熱帯低気圧」で、台風の「最大風速17m/s」よりも倍以上の水準なのです。
つまり台風よりもさらに巨大な勢力に発達したのがハリケーンなわけで、「台風=ハリケーン」ではありません。
北大西洋で台風と同じ「最大風速17m/sに発達した熱帯低気圧」とは、正確には「トロピカル・ストーム(Tropical Storm)」と呼びます。
次は竜巻ですが、これも英語名を誤解している人が多いです。
結論から言うと、竜巻の英語は「トルネード(Tornado)」が正解です。
割と「ハリケーン」とごっちゃにしている人も多いみたいですね、イントネーションも似ていますし(;^^
子供の頃は「トルネード」と「ハリケーン」の違いがわからなかったよ。
また竜巻の英語は「トルネード」ともう一つあります。
あまり一般的ではないかもしれませんが、「ツイスター(Twister)」という単語も竜巻を意味するんですよ。
だけど映画好きな僕にとっては、この単語も竜巻を連想しやすいです。
1996年に公開された『ツイスター』という映画があるのですが、この映画を観て僕自身も最初「竜巻の英語ってツイスターなんだな。」と思っていました。
実際にgoo辞書でも「twister」って検索すると、確かに「竜巻」という意味はあります。
だけど元々は「ねじりドーナツ」を意味する言葉のようで、竜巻の英語名としてはあまり一般的ではありません。
竜巻の形状が渦を巻いていてねじりドーナツのように見えるから、それを比喩的にとらえた言葉のようですね。
もし竜巻を英語で表現したい場合は、無難にトルネードでよさそうです。
まとめ
以上台風と竜巻の違いを詳しく見ていきました。ということでまとめです。
- 台風は水蒸気の凝縮熱をエネルギー源とする巨大な熱帯低気圧、竜巻は積乱雲の上昇気流で生じる細長い渦巻
- 竜巻の発生は角運動量が関係していた
- 台風の英語は「トロピカル・ストーム」、竜巻の英語は「トルネード」か「ツイスター」
竜巻は強い積乱雲の下で発生する細長い渦巻ということになるので、台風とは似て非なるものです!
台風の発生源となるのは、高温の海水面上で蒸発した大量の水蒸気の凝縮熱ですから。
ただし台風が通過した後や接近に伴って、積乱雲が発生しやすくなるので、それに乗じて多くの竜巻が発生することもあります。
日本でも多発しているので、台風と竜巻は兄弟という考えもできるね。
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