翌年のピョンチャン五輪まで1年となりました。冬季五輪では日本はフィギュアスケートがすっかりお家芸となっていて、男子では羽生結弦選手、女子では宮原知子選手のメダル獲得が期待されます。
しかしフィギュアスケートというのは氷上でジャンプしたり回転したり、さらにはステップも踏んで、演技の良さを競う競技ですが、選手が回転する時にだんだん速くなっていくのは何故でしょうか?
それは高校物理でも習う運動量保存則が関係していたのです。詳しく解説していきます。
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運動量保存則って何?
フィギュアスケートで回転が速くなる物理法則は運動量保存則と言われています。
そもそも運動量自体がよくわからない人も多いと思うので説明しますと、運動量とは、物体の運動の状態を表す物理量のことで分かりやすく言うと質量と速度の積で表現されます。
運動量をL、物体の質量をm、速度をvと定義しますと、
L=mv
と表せます、単位は[kg・m/s]です。
そして運動量保存則というのは、文字通り運動量が保存される法則のことです。実は物体が運動している最中は、この運動量がずっと一定の値を保つという法則があるのです。
ただこの説明だけでもわかりにくいと思うので、スケートを例にして考えます。
スケーターは最初スピードを出すためにスケート靴で蹴って移動を始めます。最初の内はスピードが出ませんが、蹴る回数を重ねると徐々にスピードは出ていき、最終的に蹴ってもいないのに一定のスピードを保ったまま移動することができます。
スケートを始めたばかりの頃は、調子よく滑り始めたら、リンクの端まで止まらないでコントロールがきかなくなり、人とぶつかったりした経験がある人もいると思いますが、あれはまさに運動量保存則が働いているからです。
先ほどの式を参考にすると、運動量とは質量と速度の積で表されます。人の体重が移動中に変わることはないので、当然速度も一定に保たれます。
もちろん厳密に考えれば、氷との間に摩擦が働いたり、空気抵抗もあるので永遠に等速ということにはなりませんが、それでもかなり影響は小さいと考えることは出来ます。
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運動量保存則は回転運動でも同じ!
運動量保存則は、物体の運動が直線運動の時の話でしたが、これを回転運動に置き換えるとどうなるのでしょうか?
もちろん回転運動でも運動量は保存されます。しかし回転運動で表される運動量は、角運動量と言いまして、通常の運動量とは表現の仕方が違います。
物体の回転運動には質量mと速度v、そこに回転半径rも追加されます。
また注意しなければいけないのは、回転の場合の速度は角速度になるということです。角速度はωと表します。
さらに慣性モーメントIという指標を用いると角運動量は次のように表せます。
L=Iω
ここで慣性モーメントIというのは、イナーシャとも言って質量mと速度vの2乗の積で表せます。(説明は長くなるので省略します。)
つまり最終的に角運動量Lは
L=mr^2ω
という形で表せます。
(※L=rmωとはなりません!)
と表せます。
この角運動量も外部から力が働かない場合には、常に一定に保たれる性質があります。
フィギュアスケートの回転が速くなるのは何故?
さてここまでの説明でわかると思いますが、フィギュアスケートの移動の速さと、回転の速さも運動量保存則で説明できます。
スケーターの移動の速さが変わらない理由は1で説明できましたが、問題なのは回転のスピードが速くなる現象です。
回転のスピードが速くなるのは角運動量保存則で説明できますが、角運動量の式を見る限り回転の速さはスケーターの体重が軽くならない限り、上がることはないように思えます。唯一コントロールできるのは、回転半径rです。
実はこの回転半径を小さくすることで、スケーターは回転速度を上げているのです。
もう少し詳しく説明しますと、最初スケーターが回転を始めた直後の角速度をω1と定義しますと、角運動量L1は下の図のように表せられます。
次にスケーターが腕を体に引き付けて回転半径を縮めた時の角速度をω2と定義しますと、角運動量L2は下の図のように表せられます。
この2つの状態を比較しますと角運動量L1とL2は保存されるので、
L1=L2 という式が成立します。
すなわち、
という解答が得られます。
つまり腕を組んで回転半径を半分にした時の角速度は回転を始めた直後の角速度の4倍ということになります。これがスケーターの回転速度が上がる理由です。
お分かりいただけたでしょうか?
フィギュアスケートの試合はテレビで定期的に中継されるので、興味のある方はご覧ください、最初は腕を広げて回転していたスケーターが徐々に体に腕を引き付けているのがわかると思います。
この運動量保存則と角運動量保存則も高校物理の範囲なので、試験対策のためにも理系の方はぜひ理解を深めて下さい!
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