最近では現実の世界で「皇帝」と呼ぶ君主はいなくなりましたが、一昔前の世界史ではよく登場した君主です。
「皇帝」と聞くと秦の始皇帝が有名だね。あとはローマ帝国の皇帝とか。
だけど似たような言葉として「帝王」なんてものもあります。
そういえば俳優の船越英一郎が「2時間ドラマの帝王」とか比喩的に言われていたよね。
同じ「帝」という漢字が使われていますが、この両者って何が決定的に違うのでしょうか?
それぞれの語源についても気になりますね。
ということで「皇帝」と「帝王」の2つの違いを徹底特集していきます!
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「皇帝」と「帝王」の違い!
それでは結論から申しますが、「皇帝」と「帝王」の違いを一言でまとめると以下のようになります。
- 「皇帝」とは、帝国主義国家の君主の称号
- 「帝王」とは、ある分野における最高実力者・最高権威者の俗称
こうしてみると、意味的に似たような感じな両者でしたが、ハッキリとした違いがありましたね。
実は世界の歴史で実在していた君主は「皇帝」の方で、「帝王」という君主はいませんでした。
「帝王」については現在は専ら比喩的な表現として用いられるだけです。
確かに「○○皇帝」って人物はいたけど、「○○帝王」って人物は習ったことはないね。
ただ2つとも同じ「帝」って言葉が使われていますね。
そもそも2つの言葉の起源は一体何なのか、またどっちが先に登場した言葉なんでしょうか?
「皇帝」の起源は大昔の中国の王朝!
「皇帝」という言葉の起源を探ると、少し興味深い事実がわかりました。
実はこの言葉は秦の始皇帝が最初に名乗った称号とされています。
それまでの中国は「殷」と「周」の2つの王朝がありましたが、いずれも君主は「王」と称されていました。
ところが周王朝の力が衰えて、各地で反乱が起きて戦国時代になると、かつて周王朝に従っていた諸侯が全員「王」の称号を使い始めました。
紀元前221年に秦が天下を統一して支配を始めると、当時の秦王である嬴政が天下を治めるに相応しい尊称として「皇帝」と名乗りました。
「皇帝」の「皇」の字をよく見ると、「自(はじめ)」という字と「王」という字が合わさっていますね。
実は古代中国の神話によると「皇」は、人類最初の王を意味しています。
歴史上最初に誕生した王朝である夏よりも前の時代で、この時代は3人の皇と5人の帝が支配していたとされています。
3人の皇と5人の帝、合わせて「三皇五帝」と呼びますが、「皇」が神で「帝」は聖人を表します。
すなわち「皇帝」とは、「聖人の性格を持つ神」と称するに相応しいほどの偉大で理想的な君主、という意味になります。
実際の世界史で学んだ「皇帝」が、本当にこのような性格だったかは疑問符を投げたくなりますが(;-_-
要するに「人類史上最高に自分は偉い王なんだ!」ということを、強くアピールしたい狙いがあったのでしょう。
この「皇帝」の称号は中国最後の王朝の清時代まで続きました。中国最後の皇帝を英語で「ラストエンペラー」と呼ぶのは有名ですね。
「皇帝」がいた主な歴史上の国とは?
さて「皇帝」の本来の意味は帝国主義国家の君主の総称です。
そのため帝国主義をとっていた過去の国々の君主が、総じて「皇帝」と呼ばれています。中国以外の代表例をいくつか挙げておきますね。
- 神聖ローマ帝国:カール1世
- ムガール帝国:バーブル
- ドイツ帝国:ヴィルヘルム1世
- フランス帝国:ナポレオン1世
- ブラジル帝国:ペドロ1世
- ロシア帝国:ピョートル1世
- オスマン帝国:オスマン1世
英語圏の「皇帝」の起源は?
英語では「皇帝」のことを「Emperor」と呼びますが、この言葉の起源は紀元前のローマ帝国時代まで遡ります。
紀元前帝政ローマの最高支配者となったアウグストゥスが、最初のローマ皇帝とされています。
この時代に使われていた称号が「インペラートル」という単語ですが、これが英語の「emperor」の語源になります。
「命令者」を意味する言葉で、元々は将軍を指す称号の一つでした。すなわち皇帝とは言っても、元々将軍が由来なので武人的性格が強い人物だったのです。
将軍が大陸を支配して最高指導者になるというのは、戦国時代の日本を彷彿とするね。
因みに初代ローマ皇帝のアウグストゥスは、かの有名なユリウス・カエサルの養子で、その家族名に当たる「カエサル(caesar)」も皇帝の称号の一つになっています。
通称「カイザー」ですが、この称号は主にドイツやロシアなどで用いられました。
ヨーロッパと中国の「皇帝」の差は?
さて中国ではかつて「皇帝」は全世界で最も偉大な王、という意味合いがありました。
漢の時代にヨーロッパから使者が送られたのが、ヨーロッパと中国の最初の交流とされています。
だけど当時の中国の書物ではローマ皇帝のことを「大秦王安敦」と記しました。
すなわち中国ではローマ皇帝のことを「皇帝」とは見なしていませんでした。
それもそのはずで、中国では「皇帝は地上に一人だけしかいない」という考えが強く、ローマ皇帝でも皇帝よりやや下の「王」という扱いでした。
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「帝王」とは?
さて次に「帝王」について解説していきます。
この言葉は、「皇帝」の語源の項でも少し触れましたが、「帝」と「王」の熟語でしたね。
要は同じ言葉が2つ並んだ二字熟語という形で、実質的には主権を持つ複数の政体を束ねる指導者であり、最終的な意思決定である君主の称号となります。
つまり「帝王」も「皇帝」と意味はほぼ一緒ですが、どちらかと言えば「王」に近いです。
ただし「帝」とついているから、やや「王」よりも格上であるイメージを強めているのでしょう。単に「王」というより「帝王」と呼んだ方が響きがいいですし、何より絶対的に偉いという感じが強まります。
このような意味合いが強いためか、現在ではいろいろなジャンルにおいてその道を極めた最高の実力者、及び最高権威者という喩えでよく使われます。
以下主に「帝王」のあだ名がついた主な著名人です。
- ヘルベルト・フォン・カラヤン:楽壇の帝王
- 水木一郎:アニメソング界の帝王
- 船越英一郎:2時間ドラマのの帝王
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者として活躍。
一時期ウィーン国立歌劇場の総監督やザルツブルク音楽祭の芸術監督などの主要ポストを独占するなど、多大な影響力を持つに至った人物。
数々のアニメソングのヒット曲を歌った歌手。
主にロボットアニメのテーマソングが多く、スパロボシリーズが好きと公言。
日本の俳優で、在京民放5局の2時間ドラマ全てに出演経験がある。
その出演回数の多さもさることながら、2時間ドラマの結末で犯人を崖に追い詰めるシーンが多々ありバラエティ番組でしばしばネタにされるほど。
主に日本の有名人で、特に芸術や芸能界で多大な功績を残した人物に付けられることが多いですね。
因みに「帝王」にあたる英語はなくて、「emperor」と同じになるよ。
「皇帝」の異名がついた著名人もいる?
「帝王」の異名がついた人物は多いですが、実は同じような比喩で「皇帝」の異名がつく著名人もいます。
ただし日本の著名人につくことはなく、外国の著名人限定の異名です。
その国の歴史上で皇帝が存在した場合に、特にスポーツの世界で多大な功績を収めた選手に愛称として付けられます。
- フランツ・ベッケンバウアー
- エメリヤーエンコ・ヒョードル
- ハイレ・ゲブレセラシェ
旧西ドイツの元サッカー選手。
ピッチ上で選手たちを見事なリーダーシップで操るその姿、及びオーストリアの皇帝フランツ一世とファーストネームが同じであることから「皇帝」と称された。
ロシアの総合格闘家、元PRIDEヘビー級王者であり元WAMMA世界ヘビー級王者など多大な功績を収めた。
さらに2010年まで10年間無敗という記録も保持している。
エチオピア出身の元マラソン選手、国民的英雄である。
小柄な体格とは裏腹に、元世界記録保持者で世界陸上は4連覇、オリンピックも2連覇も果たしている。
また動物にも付けられてることがありますが、特に有名なのが南極に生息する「コウテイペンギン」です。
「コウテイ」はまさに「皇帝」のことで、直立で立ったその姿があまりにも凛々しく、ペンギンの中でも「皇帝」と呼ぶにふさわしいので付けられました。
他にも史上初の七冠を達成した競走馬のシンボリルドルフが、その競争成績の凄さと、神聖ローマ帝国の皇帝ルドルフ一世と名前が同じであることから「皇帝」と称されたよ。
まとめ
以上「皇帝」と「帝王」の違いについて解説してきました。それではまとめといきましょう!
- 「皇帝」は秦の始皇帝が最初に名乗った称号、中国の神話が由来となっている
- 「帝王」も国の最高権力者、君主という意味では共通だが、現在では専ら比喩的な表現で使われる
- 「皇帝」が存在した国のスポーツ選手でその功績を称えられ、後に「皇帝」と呼ばれる著名人もいる
「皇帝」にしろ「帝王」にしろ、「王」よりも格が上というニュアンスが強いです。
俺は○○界の皇帝(帝王)になる!
と叫ぶのは響きがいいですが、目標が高い意欲的な人というより「ただの勘違い野郎」と思われかねないので注意しましょう。
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