今回は配偶者控除と言う制度について解説していきます。
働いたことのある人で結婚している人なら聞いたことあると思いますが、この配偶者控除と言うのは納税者の配偶者に収入がない、または少ない場合に納税者の総所得金額から控除される所得控除のことで、所得税法第83条に決められた制度のことです。
一時は配偶者控除は女性の社会進出を妨げる制度だという批判もあって廃止すべきだという意見もあったのですが、今回の改正ではそれまで妻の年収が103万円以下だった場合に納税者の所得税を控除する制度を、150万円まで引き上げることを決定しました。
女性の社会進出を少しでも後押しするのが目的ですが、果たしてうまくいくのでしょうか?
今回は配偶者控除について改めて制定された理由と所得税が軽減される仕組みから解説していきます!
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配偶者控除が制定された理由
配偶者控除が制定された最大の理由は扶養控除と同じで、簡単にいえば夫が妻を支えるのを国が少しでも援助しようということです。一人で暮らすよりも二人で暮らすほうがお金はかかります。その上子供の養育費なども生活費として必要となるので尚更です。
一般的には夫に適用されるのが前提となっていますが、法律上ではあくまで配偶者という扱いになるので、女性が働いて男性が育児に専念するようになれば、夫側に配偶者控除が適用されたりもするのです。
自営業の方は確定申告で直接税務署に申告するのが義務ですが、会社員の方は年末調整と言う形で書類に記載して会社に提出をしています。
103万円の壁とは?
配偶者控除でよく問題視されてきたのが103万円の壁です。
よく言われる103万円の壁ですが、実は法律ではどこにも”103万以下”という文言はありません。
正しい定義は”合計所得金額が38万円以下“です。配偶者を仮に妻とすると、妻の年収の主な収入源は一部を除けば大半がパートによるものです。
パートの収入は税務上では給与所得と言う扱いになるので、103万円の収入ということは、最低給与所得控除として65万円を差し引くことになります。
103 - 65 = 38(万円)
となり配偶者控除の要件を満たします、103万円というのは、逆算した収入の数字のことを指しているのです。
配偶者の収入が103万円を超えてしまうと、これまでの制度ではいろいろな税金が課せられてしまい結果的に配偶者の負担が増えてしまいます。といっても103万円を超えるとどれだけ損になるのかイメージが湧きにくいと思うので、具体的な例を出して説明します。
ここでもちろん働くことはできるのですが、これ以上働いて収入が入ると103万円を超えそうです。上司から後50時間分は働いてほしいと頼まれましたが、時給1000円なので5万円の収入が入ります。
ところが収入はたった5万円超えただけなのに、配偶者自身への所得税のみならず住民税への課税も開始され、企業からの配偶者手当(だいたい月2万円)の支給も停止されます。こうなると結果的に手取りが減ってしまう恐れがあるのです。
故に多くのパートで働く配偶者は収入を103万ギリギリに収めようとするのです。こういった人たちが多くいると経済的にも大きな損失であり、女性の社会進出を阻んでいると批判されてきました。
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今回の改正の内容は? 社会保険料の壁は?
今回の政府与党が行った配偶者控除の見直しは、103万円を150万円に引き上げただけで、廃止と言うところまでは行きませんでした。
つまり47万円分はパートタイムで上乗せで働けるということですが、この47万円分で果たして効果はあるのでしょうか?
47万円分といったら、時給1000円のパートで働くと仮定すると、470時間分の労働に匹敵します。
1日8時間働いたとして約60日分、つまり3カ月分の労働時間に匹敵します、仮に残業するとしたらもっと短縮されます。それまで103万円以内に収めていた主婦も今以上に働けるわけです。
しかし単に配偶者控除の基準額を引き上げればそれでいいかと言うとそう単純にはいきそうにありません。
実はこれ以外にも社会保険料による130万円の壁と言うのも存在します。配偶者控除は所得税と住民税に焦点した制度ですが、社会保険料を支払う金額も基準が決まっていてそれが”130万円の壁”と言われています。
妻の年収が130万円を超えると、会社の社会保険に加入しなければいけませんが、130万円で厚生年金保険料と健康保険料合わせて年間約15万円の負担増になるのです。
つまり配偶者控除の見直しだけでは手取りが減る現象は残ります。結局103万円が130万円に上がっただけとも言えます。150万円と言うのはあくまで配偶者控除だけなので、本当に女性の社会進出の後押しを目指すのなら、社会保険料の基準額にも踏み込んだ改正が必要ではないでしょうか。
もっとも女性の社会進出の壁となっているのは仕事と育児の両立にあると言えるので、育児休暇や保育園といった福祉の面を充実させるのが先決だと言えます。
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