先日とある海外の研究者グループが、鳥に関する驚くべき研究成果を発表しました。

その研究グループとはドイツにあるマックス・プランク研究所所属のNiels Ratternborg(読み方わからないです)さんのグループです。


この人らの研究によると、ある種の鳥は長時間飛行している時も脳の半分、または全てをシャットダウンして眠ることが判明したそうです。

つまり飛行しながら眠る、ということです。

実際に、飛んでいる最中に半球睡眠している鳥は観測されたことがなくあくまで推測の域でしかなかったのですが、今回の研究でそれが改めて証明された形になります。

飛びながら眠るって聞いただけで「嘘だろ?」って思いたくなりますよね。人間に例えたら歩きながら眠るということと同じですから、不思議に感じるのは仕方ないです。


しかしこれと同じ原理で眠る動物がほかにもいて、イルカやクジラといった海洋哺乳類が挙げられます。

彼らもまた脳の半分だけ眠らせて泳ぐことができる、通称「半球睡眠をする」動物なのです。

改めて半球睡眠とはどんなものなのか?イルカや渡り鳥の驚きの生態を探っていきましょう!




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イルカやクジラの半球睡眠とは?

野生のクジラやイルカなどの海洋哺乳類の睡眠方法は、大まかに分けると2つに分類できます。

ひとつは「水中で伸びたまま休息する」という方法、もう一つは「別の動物の側でゆっくり泳ぎながら眠る」という方法です。

特にイルカは夜間に深い睡眠形態に入り、水面に浮かんだ丸太(ログ)のように見えるため、「ロギング」とも呼ばれているほどです。


海洋哺乳類はご存知海の中で生息していますから、眠ったまま泳ぐなんてできません。

つまり眠ったり泳いだりの動作を同時にしないといけないわけですが、これを解決した睡眠方法こそ半球睡眠なのです。


水族館などでイルカを見かけたら、両目を閉じてゆっくりと泳いでいるイルカがいる一方で、中には片目を開けているイルカがいます。

これが半球睡眠です。人間と同様哺乳類は基本的に脳が左右に分かれています。つまり左右を交互に眠らせるわけです!

片目だけを閉じているのは脳の半分だけ眠っている状態で、これはイルカやクジラだけでなく渡り鳥も行っているのです。

片方は起こして、開いている片目で自分の周囲を警戒し、緊急時はすぐに行動できます。危険が多い自然界で生きる野生動物が本能的に身に着けた、画期的な睡眠方法と言えるでしょう。

特に子供がいる親イルカは子供に対し常に目を向け見守っています。


因みにイルカは一般的に夜に寝ますが、1度に数時間の睡眠しかとりません。これは、イルカが深夜に起きる魚やイカを食料としているためです。

しかしとある研究で計測されたイルカの脳波によれば、1日平均でなんと33%もの時間眠っているそうです。

また1晩で6分のレム睡眠が確認されたという報告もあります。もしかしたらイルカも、人間同様夢を見ているかもしれません。


ほかにも両目を閉じたイルカ同士がぶつからないのは、眠っている時も超音波を出して障害物の有無を探っているからだそうです。

呼吸はどうしてるの?

睡眠中にイルカやクジラはどうやって呼吸するのかも気になりますね?

これも半球睡眠に関わる話ですが、やはり彼らは意識的に呼吸しないといけないようです。

海洋哺乳類は通常呼吸や発声に使用する「噴気孔(潮吹き穴)」を使用するのですが、これが自発的・意識的でないと開閉しないようです。

睡眠時に無意識に呼吸できる人間と違い、クジラやイルカは自発的な呼吸器系のため、わざわざ睡眠時でも意識を保たないといけないのです。

また海洋哺乳類の肺はほかの哺乳類も大きいとされています。そのため一度の呼吸でより多くの酸素を取り込むことができ、頻繁に呼吸をしなくても効率的に泳げるようになっています。


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ドイツ人によるグンカンドリの調査とは?

とあるドイツ人研究者がグンカンドリの調査によって、改めて飛びながら眠る渡り鳥の観測に成功しました。

ドイツ人のRatternborgさんは、チューリッヒ大学やスイスの研究者らとも協力して、鳥の頭につけて脳電図を記録する装置を開発し、その装置を実際にガラパゴス諸島に巣を持つグンカンドリの頭に付け、実験しました。


そのフライトレコーダーを回収し分析すると、驚愕のデータがわかりました。

なんとグンカンドリたちは、10日間で3000kmの距離を飛行していたにも関わらず、最長数分間の徐波睡眠を観測したのです。

徐波睡眠とはいわゆるノンレム睡眠のこと、休息眼球運動を伴わない睡眠のことで、周波数が1~4Hzのデルタ波と呼ばれる低周波、高振幅の脳波が脳内で観測されます。 ※ Wikipediaより抜粋

渡り鳥も飛びながら半球睡眠&熟睡もしていた!

しかもこの徐波睡眠ですがさらに驚くべきなのは、脳の片側だけでなく、両側でも同時に起こることもあったのです。

つまり飛びながら熟睡していたのです!

もちろん脳の片側だけ眠る”半球睡眠”も頻繁に起きていました。渡り鳥が気流に乗って旋回している時に、片目を開けて他の鳥との衝突をしないようにするためだと考えられます。


野生の世界ではいつ他の捕食動物に狙われるかわかりません。

いつ何時でも身を守るかというのは全ての動物に共通して言えることですが、だからといって四六時中眠らないというわけにも行きません。


そこで脳の片方ずつを眠らせる方法をとれば、半分は起きている状態なので周囲の状況をある程度把握することができます。

こうすることで捕食動物に狙われないように安全に睡眠することが可能になるのです。

野生動物ならではの優れた睡眠方法と言えますね。




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グンカンドリの睡眠時間は短い?

渡り鳥の中でもグンカンドリは体重が軽いため、自力で羽ばたかなくてもある程度は滑空で飛べます。

つまり眠ったままである程度飛行できるので、ずっと寝てるほうが楽だと思いますが、グンカンドリが飛行中に熟睡する時間は1回の飛行で平均42分とかなり短いらしいです。

一方で陸上にいる時は1日12時間も寝てるので、飛んでいる時は相対的に睡眠不足になっているはずです。


それでもグンカンドリが飛行中も絶えず起き続けないといけないのは、食料の補給が関係しています。

グンカンドリの羽毛には油分が少なく、いったん水面に降りると水を吸収してそれ以降は飛び立つのが困難になります。

彼らの餌は海面に出てきた魚やイカですが、水に浸からないように水面に近いギリギリの高度を維持しつつ飛んで、餌を獲得しないといけないわけです。

半球睡眠だとそのような飛行が制御できません、睡眠時間が短くなるのはこのためです。

そんな睡眠不足の状態でも長時間飛行し続ける渡り鳥の根性には驚きますね(;^^)

しかしそれ以前に半球睡眠だと見当違いな方向に飛んで迷子になったりもしそうですよね?


ところが渡り鳥の生態をさらに詳しく探ると、道にも迷わない優れたナビゲーション能力が備わっていることもわかってきました。

一度も行ったこともない地で放たれた渡り鳥が、道に迷わずに目的地まで飛んで行ったという研究結果があるくらいです。

他にも渡り鳥に関してはV字飛行も有名ですが、これについての雑学も当ブログで取り上げておりますのでぜひご覧ください!
渡り鳥がV字になって飛ぶ理由は?先頭はリーダーじゃない?

まとめ

今回はイルカや渡り鳥の驚くべき生態の研究について解説してきました。

脳の半分を休める半球睡眠を行うことで、長時間の水泳や飛行が可能になっているというのは改めて驚きしかありません。

仕事が忙しかったり、遊びすぎたり、いろいろな作業をして、睡眠時間が短くなり寝不足になるというのは現代社会で生きる人間にはよくあることです。

人間も渡り鳥やイルカのように半球睡眠できるようになったらこういった問題は解決できるので、一部では本気で人間の半球睡眠を実現させようという研究もあるくらいです。

けどそうなると、本当の熟睡というのも味わえなくなるから悩ましい所です(;-_-)




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